「洗濯物の下着を手に取ったが、臭いをかぐためで、盗むつもりはなかった」。窃盗未遂の疑いで緊急逮捕されたものの、こう否認した男が釈放されたと佐賀県の地元紙で報じられた。ネット上では、驚きの声が上がるとともに、疑問も相次いでいる。
男の釈放を報じたのは、2014年1月7日付の佐賀新聞だ。
「県の迷惑防止条例に引っかかんないの?」
記事によると、無職の男(67)は6日夕、佐賀県嬉野市内の民家1階のバルコニーに干してあった女性用下着に手を伸ばしているのを近所の人が見つけ、声をかけると逃走した。しかし、通報で駆け付けた鹿島署員が、この民家近くに止めてあった車を取りに戻ってきた男に気づいて緊急逮捕した。
ところが、佐賀地裁は、盗みの故意性などは認められないとして、嫌疑不十分で正式な逮捕状請求を認めなかった。これを受けて、鹿島署は、逮捕から6時間半ほど後に男を釈放し、7日になってそのことを報道発表した。
佐賀新聞が報じると、ネット上では、下着を手に取り、臭いをかごうとしたことを認めたにもかかわらず、男が釈放されてしまったことに驚きの声が出た。
「マジか 嗅ぎ放題やんな」「クンカクンカ無罪」「塀の外から手だけ伸ばした・・・ならセーフなのかねえ?」
一方で、釈放に対する疑問の声も続々と出ている。
「不法侵入とか他にも容疑あるんじゃね?」「県の迷惑防止条例に引っかかんないの」「嗅ぐだけならオッケーっていう前例作ってどうするw」
中には、下着の持ち主は、気持ち悪くてもう使う気がしないはずだとして、器物損壊の疑いもあるのではないかとの指摘もあった。
鹿島署の副署長は、取材に対し、釈放について、「裁判官の判断であるのかなと思いますので、コメントする立場にはありません」と答えた。
男を逮捕したことについては、その妥当性をこう説明する。
迷惑防止条例違反の疑いでも立件できる?
「道路から敷地内に10メートルも侵入しており、下着を盗む意思があったと判断しました。確かに外見だけでは分からず、その意思が本当にあったのかの立証は難しいですが、シチュエーションによってケース・バイ・ケースの判断になると思っています」
男はいったん釈放されたが、鹿島署では2014年1月7日に、住居侵入の疑いで再逮捕したことを明らかにした。調べに対し、男はその容疑は認めているという。佐賀新聞も8日になって、記事に再逮捕の事実を付け加えている。
当初は、住居侵入などではなく、窃盗未遂で逮捕したことについては、刑が重い罪をまず適用することになるためと言っている。男はこの容疑は否認しており、ポケットに入れたといった事実が確認されないと立証は難しいという。ただ、その可能性は残っているともした。家宅捜索については、捜査上のことなので言えないとしている。
また、佐賀県の迷惑防止条例に抵触することが分かれば、条例違反の疑いでも立件できる可能性はあるという。器物損壊については、下着に体液や尿などを付けたとして立件されたケースはあるが、鹿島署では、今回はどう解釈するかの問題があり、分からないとしている。
下着などを手に取ったり、臭いを嗅いだりしただけで、犯罪として立件したケースは聞いたことがないそうだ。ただ、野放しにすればこうした行為が助長されかねないため、場合によっては罪に問われる可能性はあるようだ。