「らくらくスマホ」フランスで好評 日本メーカーの海外成功第1号となるか

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   富士通が高齢者を対象に開発したスマートフォン(スマホ)が、フランスで人気だ。販路は一部地域から全土に広がり、今後は欧州各地への拡大を見込む。

   世界のスマホ市場では、米アップルや韓国サムスン電子など外国勢の独壇場なのが現実。富士通の戦略が欧州で成果を上げれば、現状では影の薄い日本メーカーが海外市場で成功するヒントになるかもしれない。

「爆発的ではないが着実に伸びている」

フランスで受け入れられた「らくらくスマホ」
フランスで受け入れられた「らくらくスマホ」

   富士通がフランスで販売するスマホは、同社製品の「らくらくスマートフォン」に手を加えたものだ。通話やメールといった基本的な機能が操作しやすいように、画面のタッチパネルが大きく表示されている。2001年に携帯電話「らくらくホン」を発売して以降、高齢者をターゲットとした独自の端末開発を進め、国内で顧客を獲得していった。

   同社の広報IR室に聞くと、海外での商品展開にあたっては現地で複数のスマホのラインアップを提案した。だが、一般向けのスマホでは「アイフォーン(iPhone)」をはじめ強力なライバルがひしめきあっており、後発参入企業にとっては不利だ。そこで、シェア獲得競争に巻き込まれるのを避け、強みを生かして存在感を発揮するために、独自色の濃い「らくらくスマホ」を選んだという。同社にとって、スマホでの海外進出は今回が初めてとなった。

   フランスの通信大手「Orange」を通じて2013年6月に発売。フランスを選んだのは「欧州の中でも高齢化が進んでいる国というのが理由」だと、広報IR室は説明する。当初の販売地域はフランスの一部にとどまっていたが10月には全土に広げ、取扱店舗も250店と拡大した。

   フランスの高齢者層におけるスマホの普及率は20%程度にとどまる一方、この年代の携帯電話利用者の75%が今後1年以内にスマホへの買い替えを予定している――。米オンラインITメディア「TechCrunch」は2013年2月18日、市場調査会社のデータを引用してこう報じた。「らくらくスマホ」が受け入れられる下地は十分あると考えられる。発売からおよそ半年、「爆発的な売れ行きとはいきませんが、これは日本でも同じです。当初期待していたとおり着実かつ順調に伸びています」(広報IR室)。

   山本正已社長はこれまで複数のメディアの取材に対して、今後フランスだけでなく欧州各地にも市場を拡大していく方針を明らかにしている。

高速ネットワークに対応する端末の設計力が突破口に

   青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏は、富士通のこうした海外戦略を評価する。「高齢者向けモバイル端末は、同社が長い時間をかけてノウハウを積み重ね、顧客の声に耳を傾けて改良してきた重要な製品。得意分野で勝負できる」というわけだ。

   国土交通省・長期展望委員会が2011年2月21日付で公表した「『国土の長期展望』中間とりまとめ概要」によると、日本国内の65歳以上の人口は、2005年の2576万人から2050年には3764万人に達し、総人口における割合は39.6%を占めるまでになると予測されている。欧米やアジアの主要国でも高齢化は進むが、割合でみると少子化進行も相まって日本が群を抜いて高い。

   あまり喜ばしいとは言えない現象だが、「日本が世界一の『高齢者大国』になるからこそ、国内メーカーはシニア世代の消費者をターゲットに質の高い製品を開発しなければなりません。スマホでも、海外メーカーにはまねできない独自の端末を生み出せる可能性が高まるでしょう」(木暮氏)。

   現状では、富士通のように特定の層にアピールできるスマホを開発している国内メーカーはほかに思い浮かばないと話す。従来、通信キャリアの要望に沿って「無難な端末」を投入してきた結果、独創性のあるモデルが出てこなくなったようだ。

   一方で、日本は消費者の要求レベルが外国と比べて高く、一つひとつクリアしてきたメーカーが生き残ったのも事実。また日本のネットワークの品質は世界有数だが、端末の能力が乏しいと「つながりやすさ」は実現しない。「日の丸スマホ」が今後、海外市場でアップルをはじめ競合他社とわたりあうには、特定層をねらった端末そのものの独自性に加えて、「顧客の高い求めに応じられる高い技術力と、『確実につながり、接続スピードが速い』という優れた端末の設計力が突破口になるかもしれません」。

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