アベノミクス効果で株価上昇がさらに期待されるなか、2014年は国内REIT(不動産投資信託)市場への注目度も増している。
REITは取り扱う物件によってオフィス系、物流系、住宅系などに分けられるが、なかでも景気回復を反映してオフィス市況が改善していることから、「オフィス系REIT」の値上がりが期待されている。
空室率が改善、賃料「14年後半から上昇」
2013年の国内REIT市況(東証REIT指数)は1年間で35.9%の上昇、REIT全体の時価総額は7兆6144億円と前年比68.7%の増加となった。東証リート指数は2013年9月以降に大きく上昇し、国内株式(TOPIX)を上回る上昇率となるなど堅調に推移している。
三菱UFJ投信は、「2020年の東京五輪の開催決定を追い風に個人投資家らの注目を集めたことや、10年もの日本国債の利回りが0.6~0.7%台の低水準にあること(REITの利回り3.74%)などが影響している」ことが背景とみている。
景気が回復基調に乗ったことでオフィス需要が高まり空室率の改善が期待されることや、2015年にかけてオフィスの新規供給が比較的少ないことが影響するともいう。
REITに詳しいアイビー総研の関大介氏は、「14年の見立ては2とおり」という。一つは空室率が改善して、賃料が14年後半から本格的な上昇に転じる、というシナリオ。
オフィス仲介の三鬼商事によると、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は13年9月に7.9%と3年10か月ぶりに8%割れとなって以降、10月が7.56%、11月は7.52%と改善が進んでいる。
REITの業績に直結する賃料の見通しは、13年10月に1年4か月ぶりに上昇に転じるなど、底打ち反転の兆しがみえている。日本不動産研究所と三鬼商事が共同で調査したオフィス賃料予測では、14年は11.8%増、15年は8.5%増と大幅な上昇を見込んでいる。
オフィス市況の改善がさらに進めば、REITにとっては保有不動産の収益の本格的な改善・拡大につながり、ひいてはREIT価格を後押しすることが期待できる。
もう一つは4月の消費増税の影響で景気回復が鈍化することで賃料が上がらない、という見立てだ。
かつては大型物件の需要が増加すれば、ほどなく中古・中小物件の市況も回復したが、最近は供給超過と耐震化の影響で「物件の二極化」が進展し賃料は上がりにくい、との指摘もある。
リートもNISA対応で「買いやすく」なる
とはいえ、REIT市場は、相対的な配当利回りの高さや、オフィス市況の改善や不動産価格反転などを背景に、底堅い基調で推移するとの見方が一般的だ。
今後のオフィス市況は、新規オフィスビルの供給減少が見込まれるため、空室率の低下傾向が継続→賃料の底打ち反転→REITの保有物件の収入増加につながるというわけだ。また、REITが公募増資で調達した資金を活用して積極的な物件取得を進め、分配金の維持・増加につながることが期待できるという。
さらに2014年1月6日から始まった、年間100万円までの少額投資非課税制度(NISA)を踏まえ、投資口を分割(最低投資金額の引き下げ)し、小口化して投資家に「買いやすく」する動きがオフィス系REITで相次いだことも、投資機運を高めた。
日本最大のオフィス系REITの日本ビルファンド投資法人は投資口価格を2分割して、1口約60万円で買えるようにした。また、ジャパンリアルエステイト投資法人も2分割して1口約50万円から、ジャパンエクセレント投資法人は5分割して1口約12万円で買えるようにした。
前出の関大介氏は、「REITは株価に遅れて(景気回復が)反映されますから、これから分配金がまだ増える余地があるとみられます」と話している。