「ふるさと納税」、特典で広がる 寄付の御礼に「地元特産品」、やりすぎの声も

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   自分の故郷や応援したい自治体に寄付をする「ふるさと納税」制度がスタートして5年を経過し、着実に広がっている。寄付した自治体からお礼に特産品などが贈られる特典が充実しているからだ。

   ただ、特典については過熱気味という声もあり、総務省はこのほど、「適切に良識を持って対応」するよう求める文書を全国の自治体に送った。

12年は全国で12万件突破

特典はやりすぎ?(画像は「ふるさとチョイス」サイト)
特典はやりすぎ?(画像は「ふるさとチョイス」サイト)

   「ふるさと納税」は、地方で生まれ育ち、都会で暮らして都会で納税している人たちが、ふるさとに少しでも「恩返し」できないか、ということから2008年に創設された。人口減少などによる地方の税収減を補い、大都市との格差是正を図る狙いもある。ただし、寄付対象は自分の出身地の自治体でなくても、全国どこでもいい。

   仕組みは、居住地以外の都道府県や市区町村への寄付の一定以上の額が税控除の対象となり還付される。控除の対象は「5000円を超える額」でスタートし、2011年から「2000円を超える額」に拡充された。例えば1万円を自治体に寄付した場合、2000円を引いた8000円が控除対象になり、基本的に所得税、住民税合わせて8000円安くなる。つまり、実際の自己負担は2000円だけになる。ただし、自治体が発行する証明書を添付して確定申告する必要がある。

   総務省のまとめ(ほぼ全都道府 県と市区町村の9割の回答を集計=2013年9月発表)によると、寄付は都道府県、市区町村合わせて2008年は約5万4000件、77億円、 2009年は約6万300件、68億円だったが、2011年に東日本大震災の被災地への義援金が加わったことから約11万400件、138億円に急拡大。2012年は寄付金額こそ96億円と減ったものの、件数は12万1900件に増えており、順調に定着してきているといえる。

過半数の自治体が「特典」付き

   同省が2013年4~6月に行った自治体へのアンケートによると、寄付者に対しては47都道府県のうち23の都道府県(49%)と1742市区町村のうち909市区町村(52%)が特産品やその地域で使える割引券、商品・宿泊券などの特典をつけている。ふるさと納税の情報を集めたサイト「ふるさとチョイス」も登場している。

   具体例を見てみよう。鳥取県米子市は地元企業の協力も得て、1万円以上の寄付者にハムの詰め合わせや黒豚、地鶏など64種類の特産品(5000円相当)の中から好きなものを送る(3万円の寄付なら2品)。寄付金は2008年度1067万円が2012年度は8906万円に増えた。2013年5月から寄付額と同等の地元産のコメを贈るのが長野県阿南町で、1万円で20キロ、2万円で40キロ。高額特典は大きな反響を呼び、2012年度270万円だった寄付が、2013年度は11月5日に今年度のコメの受付を打ち切った時点で1億円を突破した。

   地元に来てもらって地域経済振興と一石二鳥を狙うものもある。群馬県中之条町は5万円以上の寄付を対象に町内産米などを特典として贈っていたが、例年寄付する人は十数人程度で、2012年度の寄付額は約150万円と伸び悩んでいた。そこで、5000円以上の寄付で半額相当の町内飲食店や旅館でのみ使える「感謝券」を贈呈するようにした。「ふるさとチョイス」サイト上でPRを始めた10月25日から1か月半で約200人から計1000万円以上の寄付集まったという。

福井県「故郷応援の趣旨にそぐわない」

   ユニークな特典もある。大阪府泉佐野市は、特産品のタオルなどのほか、関西空港周遊クルージング招待券、さらに地元「犬鳴山七宝瀧寺」での滝修行などを行う1日修験体験など次々にラインアップを加えた結果、寄付は2011年度633万円が、2012年度は1902万円と飛躍、2013年度も10月末までで1500万円を超え、前年度を上回るペースだ。

   静岡県磐田市はサッカーJリーグのジュビロ磐田の観戦チケット、千葉市はプロ野球・千葉ロッテマリーンズの特別観覧席招待の特典がある。また、先に紹介した中之条町は100万円以上の寄付者に対して「1日町長」に就任してもらう制度も設けている。ただし実績はまだないとのこと。

   他方、ふるさと納税制度創設を提唱した西川一誠知事を擁する福井県は特典を設けていないためか、2012年度の寄付は5642万円(県内市町村を含む)と初めて6000万円を下回ったが、それでも県は特典導入には「故郷応援の趣旨にそぐわない」として、慎重姿勢だ。

   たしかに、阿南町の例では、実質負担が2000円で3万円寄付しして、成人1人の年間消費量に相当する60キロのコメをもらえることになる。寄付者が住む自治体での税収は3万円減り、寄付された阿南町も、経費で全額持ち出しになるので実質的には税収は増えない。コメを買い付ける町内の農家が潤い、地域経済の助けになるとはいえ、「公的制度として、どの程度が適正か、議論が必要」(自治体関係者)との声もある。

   総務省のアンケートでは、使途を公表している自治体が約5割にとどまるという問題もあり、同省は自治体に対して、インターネットでのクレジット決済の導入など受領方法の多様化などとともに、寄付金の使途を公表することなど5項目を要請している。

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