アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏がワシントン・ポストを買収するなど、アメリカメディア再編が進んでいる。経営難に苦しむニューヨーク・タイムズ紙に対しても、買収に意欲を示す人が現れた。
ところが、どうやらその人物は相当変わった人物らしい。陳光標という中国人の大富豪で、現金をばら撒くなど過激なチャリティー活動で知られるほか、尖閣諸島に関する意見広告をニューヨーク・タイムズに出したこともある。買収は本当に行われるのか。
「破産のリスクも冒すこともためらわない」
陳光標氏は2014年1月5日、「ニューヨーク・タイムズを買収するつもりだ。どうか冗談と思わないでほしい」という題で環球時報(Global Times)に寄稿した。「釣魚島は太古以来、中国の一部だ」と、尖閣諸島の支配権を主張する広告を出した2012年から、買収を考えていたという。
「ニューヨーク・タイムズの伝統とスタイルが、中国についての客観的な報道を困難にしている」と、中国報道の論調について独自の主張を展開し、「もし買収できたら報道のトーンを変えられるかもしれない。だから同志の投資家とともに買収に関する議論を深めている」としている。
同社の買収額を10億ドルと見積もり、香港の企業家に6億ドルを出資するよう説得したという。「破産のリスクも冒すこともためらわない」とまで発言した。
だが、ニューヨーク・タイムズ側は買収を否定しているうえ、同社を支配するオックス・サルツバーガー一族が以前から「売りに出さない」と明言していることから、陳光標氏による買収は難しそうだ。同社の株はクラスAとクラスBに分かれていて、一族が議決権の多いクラスB株のほとんどを所有している。
また陳光標氏は冗談ではないことを強調しているが、これまでの奇抜な活動などから単なる「売名行為」と見る向きが強い。「チャリティーモンスター」とも呼ばれる陳光標氏は、災害などが起こるたびに金に物を言わせたド派手なパフォーマンスで、メディアを騒がせてきた過去がある。