インフルエンザの季節がやってきた。2014年は1月下旬から2月上旬にかけて流行のピークになるとみられ、注意が必要だ。
国内では今シーズン、抗インフルエンザ薬「タミフル」が効きにくい耐性ウイルスが検出されている。さらに中国では、鳥インフルエンザの人感染で死亡するケースが報告されており、油断はできない。
札幌で6人から検出、患者間の感染はなかった
国立感染症研究所は1月6日、北海道札幌市の患者6人から2013年12月27日までに検出されたインフルエンザウイルスが、タミフルやラピアクタといった抗ウイルス薬に耐性を持っていることを明らかにした。患者間で直接の感染はなかったと判断する一方、ウイルスの遺伝子の塩基配列がいずれもほぼ同じだったことから、同一の耐性ウイルスが札幌市内で伝播している可能性が高いという。また患者は検体採取前に抗ウイルス薬の投与を受けておらず、体内で耐性ウイルスになったとは考えられないそうだ。
このうちひとりの患者については、2013年12月24日付で詳細が報告されている。39歳の女性で、11月16日に38度の発熱と呼吸困難のため札幌の病院で診察を受けた後に入院。発症3日後の11月19日から28日までラピアクタを1日300ミリグラム、30日までタミフルを同150ミリグラム投与されたが、症状は改善しなかった。
原因となった「H1N1」亜型ウイルスは、2009~10年にかけて新型インフルエンザとして世界で爆発的に流行した。厚生労働省が2010年11月3日時点でまとめた国内の死者数は203人と、被害は大きかった。
タミフル耐性ウイルスは2007~08年にも欧州で検出されている。翌08~09年シーズンには世界中に広がり、日本でも耐性ウイルスがほぼ100%を占めたという。また、今回札幌で見つかったものと同様のウイルスが米国でも2013年末までに10例報告されており、大半は南部ルイジアナ州で検出された。ただし遺伝子の配列から見て、札幌のウイルスとは異なるようだ。
タミフルが効きにくい半面、リレンザやイナビルといった別の薬剤は実験で効果が確認された。厚労省によると、2013年9月末時点でリレンザは約630万人分、イナビルは約700万人分が確保されている。国立感染症研究所によると、国内で使用されている4種類の抗ウイルス薬すべてに耐性を示す変異ウイルスは、これまで1例も報告がない。
年末年始にかけて鳥インフル感染者が続々
感染防止のためには今後も細心の注意を払う必要はあるが、ひとまず耐性ウイルスが原因のインフルエンザにかかっても有効な治療薬があると分かれば安心だ。だがこれとは別に、鳥インフルエンザは今シーズンも中国で猛威をふるっている。こちらの対策も怠ってはならない。
中国江西省の衛生庁は2013年11月17日、同6日に肺炎で死亡した女性から「H10N8」型鳥インフルエンザウイルスが検出されたと発表した。この型の人への感染は、世界で初めてだ。ただしウイルスの感染力は弱く、人から人にうつって患者が爆発的に増える恐れは少ないとみられる。
しかし年末年始にかけて、インフルエンザの深刻な感染例の報道は引きも切らない。2013年12月26日には「H7N9」型鳥インフルエンザで、香港で初めて死者が出た。12月31日に台湾、2014年1月3日は上海で、それぞれ同型のインフルエンザ患者が確認された。1月5日に中国浙江省の衛生当局が発表したケースでは、30代の女性が重体だという。翌6日には広東省で初の患者が報告されるなど、毎日のように感染者が見つかっている。
厚労省によると、日本国内ではこれまでN7N9型ウイルスに感染した患者は確認されていない。人から人に持続的に感染した例はなく、患者が海外から日本に渡航してきたとしてもすぐに大流行するとは考えにくい。とはいえ、「家族間での感染が疑われる事例」は海外で報告されており、このような接触が今後日本で起きないとは言い切れない。流行のピークまでに観光や仕事で中国に渡航する人もいるだろう。現状ではタミフルが有効とされるが詳細は調査中で、有効なワクチンはまだ開発されていないという。
耐性ウイルスが原因の新型インフルも鳥インフルも、予防が肝心だ。正しいやり方にのっとった手洗いやうがい、日ごろの健康管理といった基本事項を守り、鳥インフル感染を防ぐためには用事もないのに家きんが飼育されている場所に近づいたり、鳥類に触れたりしないよう心掛けてほしいと、厚労省は呼びかけている。