「ドーハ・ラウンド停滞という状況は変わらない」
ドーハ・ラウンドはWTOに加盟する159か国・地域が参加している。しかし、先進国と新興国・途上国間との間の対立が激しく、これまでの交渉は決裂と再開を繰り返し、10年以上も停滞状態にあった。このため2011年12月には、全分野の一括合意をあきらめ、「貿易円滑化」など3分野のみの合意を優先して目指す方針に転換。3分野の合意は「ドーハ・ラウンド打開の最後のチャンス」(通商関係者)とも言われ、万が一、決裂すれば、ラウンドそのものの危機感も浮上していた。
土壇場で部分合意が実現したのは「世界のほとんどの国が参加するラウンドを破綻させてはならないという多くの国の熱意が残っているため」(通商関係者)といわれる。ただ、「そもそも合意して当たり前のテーマだけ選ばれた」とされる3分野の交渉でさえ決裂寸前まで至ったことで、多国間交渉の難しさが改めて浮かび上がった。残る5分野について進展の見通しなどはまったくなく、「ドーハ・ラウンド停滞という状況は変わらない」(通商関係者)というのが実態だ。
こうしたドーハ・ランド難航という現実を前に、地域間・2国間FTA交渉の流れが引き続き広がって行くとの見方が強い。早期妥結の期待が高まる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉や、米国や欧州連合(EU)、日本が絡むFTA交渉は次々進んでおり、WTOの枠組みを飲み込むように広がる可能性もあり、WTOの存在感が問われ続ける状況に変化はなさそうだ。