国内では2007年6月末以降CMに出ていない
先述のサロン・ドット・コムの記事では、米ファストフード業界のコンサルタントがドナルドの「CM降板」の背景を分析している。1970~80年代にかけての広告戦略は、「マクドナルドランド」に住むドナルドとその仲間が子どもたちを楽しませるためにやって来たという「おとぎ話」のストーリーだった。この世代が成長すると、もっと洗練されたアピール方法が必要となった。スポーツ選手や芸能人といった知名度の高い有名人を登用する一方、「夢の世界」はわきに追いやられ、ドナルドもCMでの地位を失っていったのではないかという。
最近の国内のTVCMを見ても、商品を購入する社会人を意識したつくりが多い。日本マクドナルドによると、ドナルドがCMに出なくなったのは2007年6月末以降だという。「マーケティングの戦略上、商品やキャンペーン内容そのものを取り上げて紹介した方が伝わりやすいとの理由」だと広報担当者は説明した。一方で米市民団体による「反ドナルド運動」の影響については、「全く関係ありません」と否定した。実際はそれ以前にテレビ画面から姿を消していたことになる。
存在感という点では、公式ウェブサイト上でも薄れている印象がある。トップページにその姿が掲載されていないだけでなく、多少サイト内を巡ってみてもドナルドを探し出すのは容易でない。「お店をさがす」という個所をあれこれクリックして「ドナルドルーム」というページに行きついた。見てみると、現在どんな活動をしているかがわかった。
ひとつは、幼稚園や小学校を訪問して環境や食育、交通、防犯といったテーマで子どもたちにルールやマナーを教える出張教育サービス。もうひとつは、全国の店舗を回って一緒にゲームをしたり踊ったりして楽しむイベントだ。テレビ画面を通してではなく、現在ではCSR(企業の社会的責任)を進めていくうえで、消費者が直接触れ合えるキャラクターとしての活動に軸足を置いているとみられる。母国では厳しい「引退勧告」を突き付けられたが、たとえCMからは撤退しても完全に身を引くつもりはなさそうだ。