大人が楽しめるテーマパーク「鬼平江戸処」 NEXCO東日本にサービスエリア・パーキングエリア「変身」を聞く

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   年末年始に高速道路を使って帰省する人も多いことだろう。長時間の運転は事故の元となり、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で適度な休憩が欠かせない。

   そんなSA・PAが、「目的地への通過点」を超えて魅力的な場所に生まれ変わろうとしている。高速道路に附帯する施設やサービスを展開しているNEXCO東日本(東日本高速道路)の芝尾光弘さんと小熊彩子さんに話を聞いた。

リアリティ追求したテーマ型エリア「鬼平江戸処」

――先日開業したNEXCO東日本のパーキングエリア(PA)「鬼平江戸処」は、開業前からネットで話題になっています。姉妹サイトのJタウンネットが記事を公開したところ、3日間で800件以上のツイッター投稿がありました。

「鬼平江戸処」の入り口(写真上)。店員も江戸時代の雰囲気
「鬼平江戸処」の入り口(写真上)。店員も江戸時代の雰囲気

   2013年12月17日の内覧会を取材した記者によると、建物からサービスに至るまで映画のセットのようなリアリティで、「大人が楽しめるテーマパーク」になりそうと言っていました。このような新しいタイプのエリアを開設した背景を聞かせてください。

小熊 「鬼平江戸処」は池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」の世界観を演出した、東北自動車道上り線・羽生PAの施設です。鬼平こと長谷川平蔵が生まれた1745年から、江戸の町人文化が隆盛を極めた文化・文政年間の1829年までにスポットを当てています。
   羽生PAの近くには日光街道の「栗橋関所」が設けられていたので、古き「江戸の入り口」に設けるPAのテーマにふさわしいと考えました。時代小説ファンやシニアはもちろん、東京オリンピックを控えて外国人観光客にも楽しんでもらえるのではないかと思います。

――いつごろからこのようなSAやPAが増えたのですか

芝尾 新しいタイプのSAやPAの開発は、2005年の日本道路公団の民営化を機に進められました。それまでの施設やサービスは、画一的に進められがちだったのですが、現在では高速道路のお客さまのニーズにお応えするとともに、さらなる楽しみを見つけていただけるよう努めています。
   最初に手掛けたのは、SAやPAを旅の途中で楽しく過ごせる場にする「Pasar(パサール)」と名付けた施設です。デパートの地下食料品売場など一般の商業施設をヒントに開発した千葉県の幕張(上り線・下り線)を皮切りに、埼玉県の羽生(下り線)や三芳(上り線)の4か所で展開しています。
   埼玉県の寄居には、独自の世界観を演出する日本初の「テーマ型エリア」として、「寄居 星の王子さまPA」(上り線)を2010年6月から展開していますが、今回の「鬼平江戸処」は第2弾となります。

欠かせない「地元経済への貢献」という視点

――民営化後は施設の数は増えているのですか。また、利用者のニーズに合った展開にすることで、何か変化はありましたか

東日本高速道路事業開発本部の芝尾光弘氏と小熊彩子氏
東日本高速道路事業開発本部の芝尾光弘氏と小熊彩子氏
芝尾 エリアの新設は高速道路の延伸と連動するので、SAやPAの数もそれほど増えていません。むしろ既存の施設をリニューアルし、利用しやすいものに変えていくことに力を入れています。
小熊 「Pasar」へのリニューアルによって、売り上げが2倍から3倍になったところがあります。ただ、お客さまの数は高速道路料金の無料化や割引などの施策などによるところもあるので、単純に数字だけで評価するのではなく、まずはサービスの質を上げ、利用者の満足度を高めてリピーターになってもらうことを目指しています。

――「地域ごと」の違いも、かなり強く打ち出しています

芝尾 当社では、事業を進めるにあたって地域との連携を大切にしているのですが、高速道路をご利用のお客さまは、目的地までの途中にある地域を通過してしまうことになります。
   そこで、SAやPAを「地域のショーウィンドウ」にすることで、お客さまにその地域の魅力を知ってもらい、特産品などを購入してもらうことを通じて、地元の経済に貢献できれば、と考えています。SAやPAを運営するための雇用創出も、小さなものではないと思います。
小熊 市原(千葉)や菅生(宮城)、那須高原(栃木)、横川、赤城高原(群馬)、友部(茨城)のSA・PAは「ドラマチックエリア」と名付けて、各地域の魅力を生かした旅のドラマを演出する特産品などを取り揃えています。
   たとえば、市原SA(上り線)では若者に人気の「カフェ・カンパニー」が運営しています。開放的なリゾート風のインテリアで地産品を取りそろえ、房総半島のイメージを前面に押し出していますが、ここを利用する方に房総の魅力を知っていただき、次の旅行先に選んでもらいたいという思いがあります。

物流機能を確保しつつ「防災」の視点も強化

――SA・PAは今後、どのような方向を目指していますか

芝尾 現在検討している3年から5年の中長期の計画では、SA・PAをバランス良く改良していきたいと考えています。宮城県の菅生(すごう)PA下り線など現在10か所で展開している「ドラマチックエリア」では、特に地域色を色濃く演出していますが、こうした取り組みを継続して地域の魅力を高速道路から広く発信していきたいと思います。また、東北の復興も、こうした取り組みにより微力ながら貢献できればと考えています。
小熊 震災を機に「防災」という視点も強化しています。常磐自動車道の上り線に2014年春開業する「Pasar守谷」は、自家発電設備や通信設備、ヘリポートや防災備蓄品を整備し、建物内のレイアウトを変更して自衛隊や消防などの被災地支援を行う機関が「災害対策室(仮称)」として活用できる機能を備えています。首都直下型地震などの広域災害が発生した場合には、被災地への支援拠点として役割を担うことを考えています。

――休憩施設など本来の基本的役割、機能も大事です

小熊 それはまったくその通りです。NEXCO東日本のSA・PAの展開は、基本的なサービスの向上を目指す「礎(いしずえ)づくり」と、地域の特徴を活かした個性的な店舗づくりを目指す「華(はな)づくり」の2つを基本コンセプトにしています。
芝尾 礎づくりの重要な課題の一つですが、物流機能としての高速道路のヘビーユーザーはトラックのドライバーさん方です。そうした方々に安心して、高速道路を快適にご利用いただけるようなSA・PAを整備することを忘れてはいけないと常に考えています。長距離を走るドライバーの皆さまにしっかりと休憩を取っていただき、安全に目的地まで運転していただけるよう、お食事やサービス、スタッフのレベルアップなどに努めます。
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