日本を訪れた外国人旅行者が2013年12月20日、年間ベースで初めて1000万人の大台にのせた。これまでの最多は2010年の約861万人で、「観光立国」を掲げる政府にとっては悲願の1000万人達成となる。ただ国際的に見れば日本の集客力は大きく見劣りし、外国人旅行者をさらに呼び込むには課題も多い。
「東京五輪に向けて2000万人を目指したい」。1000万人を達成した20日、太田昭宏国土交通相は記念式典が開かれた成田空港でこう語った。
韓国、中国からの観光客ようやく回復
日本政府観光局が11日に発表した11月の訪日外国人数(推計値)は前年同月比29.5%増の83万9800人、1~11月の累計は同23.9%増の949万9300人で、12月中に1000万人台にのせるのを確実にしていた。 訪日外国人が増えたのは為替の円安が進み、外国人にとって訪日旅行に割安感が出たことが大きな要因だ。
さらに、日本政府が7月からタイやマレーシアなど東南アジア5か国の旅行者への観光査証(ビザ)の発給要件を緩和したことも影響した。格安航空会社(LCC)の路線拡充などでアジアからの訪日旅行が便利になった面も大きい。
特にタイからの訪日客は北海道を中心に絶好調だ。1~11月の累計では前年同期比約7割増の約39万7600人、11月だけで見れば5万1200人と前年同月(2万4239人)の2倍を超える。円高や原発事故後の放射能汚染への懸念などから一時は激減していた韓国からの旅行者も回復。韓国からの1~11月の累計数は23.4%増の227万3300人で、訪日客全体を押し上げた。尖閣諸島問題を機に低迷していた中国からの訪日客も11月は96%増の10万1900人で、9月から3カ月連続で過去最高を更新したことも影響した。
フランスへの旅行者は5000万人を超えている
安倍晋三政権は、成長戦略の一環である「日本再興戦略」で訪日旅行者について、2013年に1000万人、2030年に3000万人超を目指すとの目標を掲げていて、まずは第一段階をクリアした。とはいえ、フランスへの旅行者は5000万人を超えているほか、韓国は既に1100万人を達成済み。日本は世界30位以下で、1000万人で満足してはいられない状況だ。
今後、さらに訪日客数を増やし、3000万人超を早期に達成するには課題が少なくない。例えば言葉の問題だ。日本国内で英語などが通用するとは限らず、「コミュニケーションが問題」との指摘は多い。安倍政権は標識を多言語表記にするなどさまざまな対策を強化する方針だが、訪日客を広く受け入れるには観光地だけでなく、商業施設や街中でのきめ細かな対応が不可欠だ。
対策を進めるための人材不足も問題だ。例えば、政府観光局の職員数は日本では132人だけで、韓国は日本の約5倍、タイは約7倍を確保しているという。韓流ドラマのロケ地巡りなど、国内のソフトパワーを観光に生かす韓国に対し、日本は「クールジャパン」を標榜しながら、観光には十分結びつけられていないのも現実だ。国内の多様な力を結集し、国ぐるみで対応する必要がある。