残業代が出ないので仕事を早く切り上げようとする
今回、推進側は批判を意識して、働き手にもメリットがあると強調する。労働者は仕事の繁閑に応じて働く時間を自由に設定でき、また、長時間働いても残業代が出ないので仕事を早く切り上げようという動機づけになり、残業が減るというのだ。
具体的な制度設計では、労働側の懸念に配慮して、年収1000万円を超える専門職に限る、あるいは条件を予め決めて働く側が希望した場合に限る、などの条件をつけるほか、健康を害するような事態を招かないよう、休日・休暇を強制的に取らせたり年間の労働時間に上限を設ける、といった案もでている。
ただ、労働側は警戒心を解かない。連合総研の民間企業労働者2000人へのインターネット調査(2012年)でも、残業をした人で手当全額が支払われているのは46.9%だけで、残業代が全く支払われていない人も6.3%いた。「こうしたサービス残業の解消が先決」(労組関係者)であり、ホワイトカラーエグゼンプションはサービス残業を合法化するもの、というのが労働側の主張だ。
解雇特区の議論でも問題になった「雇用規制緩和は地域限定の特区になじまない」という厚生労働省の基本姿勢もある。労働基本権という根本的な権利は全国一律でなければならないということだ。
安倍首相は新年早々に成長戦略の実行計画を閣議決定する方針で、そこでホワイトカラーエグゼンプションを復活させたい意向とされるが、各方面の抵抗は強く、政官労使が入り乱れた議論はもつれそうだ。