2014年4月からの消費税率の引き上げをきっかけに、消費の落ち込みが懸念されている。アベノミクスに沸いた2013年。ようやく景気が上向いてきたというのに、2014年は消費者の財布のひもが再び「固くなる」心配が出ている。
消費増税だけでない、「大増税」が待ちかまえているからだ。
消費増税の家計負担は年収300万円未満世帯で5万7529円
2014年度の税制改正大綱によると、脱デフレに向けた企業の活性化を重視して、復興特別法人税の廃止を1年前倒ししたり、これまでは中小企業にだけ認めていた交際費の50%非課税を大企業にも適用する措置を盛り込んだりしたが、一方で消費増税の家計への影響を和らげる軽減税率は導入時期があいまいなまま見送られた。
消費税率は14年4月に現行の5%から8%に引き上がる。みずほ総合研究所経済調査部の山本康雄シニアエコノミストの試算では、消費増税に伴う家計負担は年収300万円未満世帯の年間で平均5万7529円、年収1000万円以上世帯で14万2174円増加する。
さらに2015年10月に、税率が10%に引き上げられた場合の負担額は年収300万円未満世帯で平均19万1764円、年収1000万円以上世帯では47万3823円にのぼるという。
ただ、税金の負担増はそれだけではない。東日本大震災の復興に充てるための復興増税は、復興特別法人税を廃止するが、復興特別所得税は2037年12月末までの25年にわたって所得税額に2.1%が加算され続ける。復興増税は「所得」に課税されるので、給与だけではなく退職金にもかかるし、株式の配当金や預貯金の利息にもかかる。
現行で年500円を上乗せしている復興特別住民税も、14年6月からは年1000円に引き上げられる。
年収1500万円超のサラリーマンに認められている一律245万円の給与所得控除は、対象となる年収を1200万円超に引き下げたうえ、控除額を230万円に減らす。その分、年収1200万円超のサラリーマンは所得税と住民税が増える。
株式の配当金や運用益などにかかる所得税や住民税は、個人の金融資産を株式市場に誘導する狙いで2003年から10%の優遇税率が適用されてきたが、14年1月からは11年ぶりに本来の20%(復興税分を除く)に戻る。
増税による投資の冷え込みを回避する狙いもあって、株式などの配当金や運用益を非課税にする少額投資非課税制度(NISA)があわせて始まるのだが、NISAはこれまで保有している株式などは非課税の対象にならない。含み益がある株式や株式投資信託を年末までに売却し、利益を確定することで税の負担増を免れることも一つの手かもしれない。
家計から失われる可処分所得はかなり多い!
富裕層にとっては、相続税の増税は痛い。2015年から、基礎控除額が「3000万円+600万円×相続人の数」になり、現行よりも控除額が約4割減る。さらには現在50%の最高税率が55%になるという、ダブルパンチなのだ。その結果、税金を払う人はかなり増えそうだ。
さらには自動車税については、購入時に減税があるが、継続保有の場合には自動車税も、車検時にかかる自動車重量税も増税。中古車への負担が増すことで、新車に買い替えやすくしようという狙いがある。ちなみに、エコカー減税も2年延長された。
一方、自動車メーカーが「弱いものイジメ」と反発していた軽自動車税は、2016年4月以降、現行の7200円から1万800円に引き上げられる。
もちろん、年金保険料の値上げは2014年もまだ続くし、健康保険料の値上げも多くの健康保険組合で実施されることになりそう。
つまり、給料が期待どおりに上がらなければ、家計から失われる可処分所得はかなり多くなることを覚悟する必要があるのかもしれない。