アベノミクスによる円安進行もあって、自動車メーカーの業績が回復基調に乗ったなか、日産自動車の元気のなさが目立っている。
世界販売台数で、トヨタ自動車が年間1000万台に迫り、ホンダは2013年9月に発売した「フィットHV」や軽自動車の「N」シリーズが快走、北米市場も好調で「16年度600万台」の目標達成が見えてきた。日産だけが「置いてけぼり」を喰らったかのようだ。
EV「リーフ」は「ゴーン社長の戦略ミス」なのか
日産自動車は2013年度通期の業績予想を、11月1日に下方修正した。連結売上高予想を従来の10兆3700億円から10兆1900億円に引き下げ、連結営業利益は6100億円から4900億円に、連結当期利益も従来の4200億円から3550億円と15.4%引き下げた。通期の世界販売計画は従来の530万台から520万台に、10万台減らした。
5月の12年度決算の発表時に、カルロス・ゴーン社長は「問題の所在はわかっている。業績は立て直せる」と自信ありげに言い放っていたが、半年が過ぎても業績は改善しない。
下方修正の最大の要因は、新興国での販売減速。日本や中国、北米では伸びを見込んでいるものの、カバーするには至らないという。
とはいえ、業績不振の原因に、「EVの迷走」を指摘する声は少なくない。ゴーン社長はEVを次世代自動車の主役と位置づけた。10年12月に日米で世界初の量産型EV「リーフ」を発売。11年には、「2017年3月までにルノーとあわせ150万台を販売する」と宣言した。
しかし、販売は低調。リーフの国内市場の累計販売台数は13年9月末で約3万台。ルノーとあわせた世界販売台数は8万3000台にとどまる。年間20万台のペースで売らなければ、目標の150万台には届かない。
そんなことだから、「16年度750万台」とする世界販売目標(計画策定時の11年度480万台)の達成も、当然厳しくなっている。「ゴーン社長の戦略ミス」の声さえ聞こえてきた。
ルノーの業績悪化 ゴーン社長、仏での立場失う?
とはいえ、トヨタやホンダ、マツダに三菱自動車、富士重工業と円安を背景に、急速に業績を回復させているのに、なぜ日産だけがこうも苦しんでいるのだろうか。
ひとつは海外戦略の違いがある。日産は早くから生産体制を海外に切り替えてきた。「日本でも逆輸入車を走らせていたくらい円高対策が進んでいた。他社のように円安の恩恵が少ないのは当たり前のこと」と、自動車セクターのアナリストは話す。ただ、「為替の影響は一時的なもの」という。
一方、ゴーン社長がトップを兼務する仏ルノーの不振が影響している、との見方がある。欧州の景気低迷で、ルノーが強みとする南欧を中心に新車販売の不振が響いたほか、同社が8割を出資する子会社の韓国ルノーサムスン自動車の不振も要因とされる。
リストラによる、「従業員のクビを切るなら、(自らの)高い報酬も減らせ」「経営トップを代えろ」との声に、ゴーン社長は労働組合との交渉に忙殺され、さらには8月にルノーのナンバー2にあたるカルロス・タバレス元最高執行責任者(COO)を、不信感から事実上更迭した。
そんな不振が続くルノーの経営を支えているのが日産。ルノーが黒字を確保できているのは日産からの収入が大きいためで、日産しだいではルノーの経営が傾きかねない状況なわけだ。
その日産の業績までも思わしくないのだから、ゴーン社長がイラつくのも無理のないことなのかもしれない。