スマートフォン(スマホ)の普及で手軽にインターネットに接続できるようになり、気づけば画面を見ているという人はいるだろう。だが、長時間の使用が体の部位に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
代表的なのが首の疾患。「ストレートネック」と呼ばれる症状になり、首や頭の痛み、ひどい肩こりを引き起こす原因になるという。
通勤時間や食事中までスマホを見て前かがみ姿勢
首の骨(頸椎)は本来、やや前に湾曲している。これが直線状になる状態がストレートネックだ。原因のひとつとして、姿勢の悪さが挙げられる。前かがみになってうつむくような格好を長く続けるのがよくない。
カイロプラクティックのクリニックを開業する木津直昭氏のサイトには、これまでに治療を受けた患者の症状が紹介されている。43歳の主婦が頭痛と首や肩のこりが強くなったとして診療に訪れた。寝ていて目を覚ますことがあるほどだが、思い当たる理由がなかったそうだ。
治療の際この女性に「最近、スマートフォンをよく使っていないですか」とたずねると、1か月ほど前から寝る前にソファーに座って1時間程度使うことが多いとの回答だった。木津氏は「スマートフォンを使うと知らず知らず(のうちに)首が前傾しストレートネックが増強され、肩が上がってきます」と説明する。
頭の重みは5キロほどあり、本来は頸椎の湾曲によって首にかかる負荷が緩和される。ストレートネックになると頭部が正常な状態より前に突き出した姿勢になり、頸椎だけでは支えられなくなって首の筋肉への負担が増す。長い間この状態が続けば、首や肩のこりを引き起こすというわけだ。
これまではパソコンが、首や肩に負担をかける「犯人」と言われてきた。実際にデスクワークで長時間、パソコンの前に座ったままというのはストレートネックにつながる姿勢だ。スマホの登場で、通勤電車や食事中といったこれまでパソコンから離れていた時間さえも前かがみになって画面をのぞきこむ習慣が増えてしまった。
医療専門紙の記者に聞くと、ストレートネックや、それが引き金となって起きる頸椎ヘルニアは、加齢と生活習慣が影響するケースが多いという。スマホが世に登場して数年しかたっておらず、その使用がストレートネックの直接の原因だとする学術的な証明は今のところないそうだが、毎日何時間もスマホの画面を見ていること自体が生活習慣のひとつとなっている現状では、スマホも新たな要因として加わったと言えそうだ。