川べりにイノシシ、塀の中に1年取り残される 神戸市などはなぜ救出しないのか

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   神戸市中央区の宇治川で、野生のイノシシ1頭が1年ほど塀の中に閉じ込められていると報じられ、関心を集めている。市などは、なぜ早く救出しなかったのか、といった声も出ている。

   「ぶーちゃん」「イノちゃん」。神戸新聞の記事によると、すでに体長1メートルに育ったイノシシは、こんな愛称で親しまれているという。

鳥獣保護法などから、保護も捕獲も難しく

   イノシシがいるのは、川の水量を調整するための池で、普段は水が流れず、土砂がたまって広場のようになっている。周囲はコンクリート塀などで囲まれており、長さ64メートル、幅27メートルの場所だ。

   記事によると、まだうり坊のころに、何らかのきっかけで昨冬にここへ入り込んだ。食べ物になるようなものはないため、住民らがパンや果物などのエサを与えている。ただ、神戸市のイノシシ条例で、罰則はないものの、餌付けが禁止される区域とはなっている。

   神戸市などによると、2013年4月に近隣住民から「まだうり坊のイノシシがいるので、どうにかしてほしい」と中央区役所に陳情があった。方法の1つとしては、保護して山に放すことが考えられた。しかし、市から相談を受けた兵庫県の自然環境課によると、野生動物なので、人や農作物に被害がなければ、そのままにしておくしかなかったという。ケガや病気などをしていれば、動物病院で手当てすることができるが、イノシシはそんなこともなかった。

   また、イノシシがいる場所は、県が管理する国有地であるため、住民らが勝手に立ち入って、救出することもできなかったようだ。

   もう1つの方法は、銃などで捕獲するというものだ。しかし、神戸市の農政計画課によると、鳥獣保護法により、人などに被害がない限りは捕獲できないことになっている。イノシシは、塀の中にいてその恐れがないため、捕獲は難しかったそうだ。

本当はそのままにしておく方がいい?

   とはいえ、報道されて注目を集めたことから、兵庫県の神戸農林水産振興事務所の林業課では、取材に対し、神戸市などとも協議して対応することを明らかにした。

「イノシシをあの場所にそのままにしておくことは、今は念頭にはありません。保護して山に放す方向で検討しています」

   ネット上でも、確かに、「さっさと助けてやれよ!」「一匹だけじゃかわいそう」といった声はある。しかし、一方で、「餌付けしてる時点で、野生に戻れんだろ」「出した後にどうなるか分からんから難しいな」といった指摘が出た。また、「ウリボウの頃に抱えて救出すれば楽だったのに」と対応の遅さを批判する声もあった。

   人に慣れたイノシシでは、市街地に出てきて、人を追いかけたり、ゴミを漁ったりするなどの心配もあるようだ。

   一方、イノシシの立場に立って、保護などを疑問視する声もある。県などによると、ある動物愛護団体は、山に放しても、人里に戻ってきて、わななどにかかってしまう恐れがあるとして、そのままにすることを要望したという。

   県や市は、今後、イノシシをどうするのか難しい対応になりそうだ。

   神戸市は背後に六甲山が控えているため、市街地までイノシシやタヌキなどの野生動物が出没することで知られている。

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