「整理が落ち着いてからも総点検していなかった」
ところが、整理が一段落してからも作品は「行方不明」のままだった。そのことは企画課長や学芸員らも把握していたが、本腰を入れて探すことはなかった。そして月日は経ち、今年7月。大規模改修工事を前に全収蔵作品を総点検したところ、依田副館長は2点が行方不明だということを知った。その後、関係者から聞き取り調査を実施した結果、「紛失」と判明し、12月20日には平塚氏の遺族に謝罪と説明を行ったという。副館長は「これは私どもの怠慢なのですが、整理が落ち着いてからも総点検という形でしらみつぶしに探すことをしていませんでした。大きく反省しているところです」と話す。
作品は現在、どこにあるのだろうか。副館長によると、当時は「そのうち出てくる」という認識があった一方で、行方不明とわかる前に行った大掃除の際に捨ててしまった可能性も否定できないものだったという。所蔵庫の中には梱包材や茶紙などが大量に放置されていたため、86年秋から冬にかけてそれらをどんどん捨てていったのだ。副館長は「大掃除で捨てた可能性は、高いと思います」と残念そうに語った。
埼玉県近美では、これまで所蔵品数を3099点としてきたが、今後は3097点になる。なお、平塚氏は紛失した2点に加え、同じときに5点を寄贈していた。展示されたことがあるのは1点のみで、あとは所蔵庫で大切に保管されているという。