まさにクリスマスプレゼントとなった。2013年12月25日、楽天が田中将大の大リーグ挑戦を認め、このオフ最大の関心事は落着した。
表向きは大団円なのだが、内実はいろいろあったようである。
戦力ダウンさせず、イメージダウンもさせない作戦
楽天の球団代表は、三木谷オーナーの意思として「チームに対する貢献を評価した」ことを許可の第一条件に挙げた。さらに「大リーグで成功の後押しをしたい」と、懐の広いことを強調した。
実は、田中の大リーグ挑戦を前提に、条件整備をしていたフシがある。
日本球界屈指のヒーローの夢と希望を阻止した場合、楽天のイメージダウンは避けられないことぐらい、ビジネスマンの三木谷オーナーは承知している。それならばイメージアップの手段を考えるだろう。その結果が田中の夢をかなえることで、それを認める最高のタイミングを図っていたといっていい。
「(田中から)今後も地元への協力と寄付をしたい、との申し出があった」と球団代表は明らかにした。田中は「球団に感謝している」と語っており、楽天としては思い通りの決着となったはずである。
一方、星野監督も手腕を発揮した。田中退団を見越して補強に力を入れた。マギーの後任にユーキリスというマギーを上回る実績を持つ現役大リーガーの獲得に成功。しっかりと補強費を出させたということである。
つまり球団も現場も、田中の大リーグ行きをちゃっかりと利用している結果となっている。これがプロの世界の本性である。
おそらく楽天には20億円の入札金が入る。田中個人は、複数年契約は確実で、オプション付きの5、6年の長期契約を取れるだろう。
有力はヤンキース。チーム立て直しを迫られており、財力を持って獲得に乗り出すことは間違いない。すでに米国のマスメディアは、5年契約で100億円とか6年契約で150億円も、などと騒いでいる。
ただし、ニューヨークのあるメディアでは「高額契約の田中が失敗すれば、日本球界の評価も下がる」と指摘している。日本で24勝無敗だからといって、大リーグで負けないことはない、と当たり前のことを言っているわけである。
どの球団に入団しても田中が先発ローテーションに入ることは確実だ。先発投手は5人で、中4日で登板する。シーズン先発回数は30試合から35試合。うち勝敗に絡むのは25試合ぐらい。15勝10敗が主力投手の成績である。
現在の大リーグの打者は、日本の投手の投球パターンに慣れている。野茂以来、松坂、黒田、岩隈、ダルビッシュらのピッチングで免疫ができているからだ。この点は田中にとって対策のポイントになるだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)