北朝鮮の「瀬戸際外交」は2013年も「健在」だった。特に3月には、米韓合同軍事演習に北朝鮮が反発し、一方的に朝鮮戦争の休戦協定破棄を宣言。攻撃対象に在日米軍基地が含まれているという声明も出たため、日本国内にも緊張が走った。
13年10月発売の電子書籍「仰天!北朝鮮」では、この様子を詳しく紹介している。今回は、その後のニュースも含めてJ-CASTのアクセスランキングから北朝鮮をめぐる1年を改めて振り返る。
金正恩第1書記がブタ画像に差し替えられる
アクセスランキング上位20本のうち、11本が3月~4月の記事で占められている。上記のように情勢が緊迫していたうえ、国際的ハッカー集団「アノニマス」の活動が活発化した時期でもある。
北朝鮮関係のサイトも不正アクセスの被害を受け、トップページが金正恩第1書記とブタを合成した画像に差し替えられるという珍事が起きた。これは北朝鮮にとっては「大恥」で、騒動をいち早く報じたJ-CAST記事に多くのアクセスが集まった。ランキングでも2位と3位を占めた。
2位:金正恩氏が「ブタ画像」に差し替えられる 北朝鮮サイトに新たなサイバー攻撃
3位:アノニマスが北朝鮮に「宣戦布告」 対外宣伝用サイトからデータ盗み出す?
攻撃は1度にとどまらず、最も祝賀ムードを演出しなければならない金日成主席の誕生日にも「ブタ画像」に差し替えられるという有様だ。
J-CASTのコメント欄を見る限りでは、
「違和感がない」
「もっとやれ」
「いやはや、お似合いすぎてワロタ」
と、失笑の声が目立った。
さらにこの騒動は日本にも波及した。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」のウェブサイトも攻撃を受け、読者のメールリストが流出。ドメインなどから大学や企業が分かるケースもあり、このサイトをウォッチしながら北朝鮮情報を収集している国内メディア関係者も多数被害を受けた。
スキー場の完成は見通し立たず
最もアクセスが多かったのが、9月に配信した「韓国・平昌冬季五輪に『危惧』の声 雪もノウハウも不足、救世主は北朝鮮か」。この記事は、18年の韓国(ピョンチャン)冬季五輪の開催が降雪量やノウハウの問題で危ぶまれており、北朝鮮側に五輪共同開催の構想があることを報じたものだ。現在の南北関係を考えれば、ほとんど荒唐無稽ともいえるこの動きには韓国でも失笑の声が多く、そのぶん記事のアクセスも増えたようだ。
金正恩第1書記は馬息嶺(マシクリョン)スキー場の建設にご執心だ。このスキー場は早期の完成を目指しているが、リフトが「贅沢品」とみなされて禁輸措置の対象になっていることなどから、完成の見通しは立っていない。この点も関心を集めたようだ。
南北をめぐる荒唐無稽な話題や、スキー場関連でアクセスを集めたものとしては、韓国が北朝鮮と組んで「対馬奪回」作戦をするというベストセラー、『千年恨 対馬島』の荒唐無稽ぶりを伝えたものや、北朝鮮が建設中のスキー場を冬季五輪会場に提案したことをとらえ、「ソウルを火の海」は断念したのかと皮肉ったものもあった。
ランキング集計後には張成沢氏が処刑される
集計時点ではランクインしていないものの、12月に入ってから張成沢(チャン・ソンテク)前国防副委員長の処刑という前代未聞の出来事も起きた。
「北朝鮮が明かした張成沢の爛れた生活 カネと女と博打と麻薬に溺れる」(12月9日)
「張成沢氏に死刑執行、「大粛清」が進行 複数の党幹部処刑、副首相2人も中国に脱出説」(12月13日)
「北朝鮮メディア、張成沢氏を『粛清』 『死刑』以外の過去記事が全部消えた」(12月17日)
「正恩氏『眉毛半分切り取り』で韓国報道過熱 強い姿見せたかった?張成沢氏処刑で動揺?」(12月20日)
J-CASTでも立て続けに報じた。長年「ナンバー2」として君臨していた故・金正日総書記の妹の夫を、失脚が報じられてから数日で処刑した理由や処刑方法などについては様々な報道があるが、真相はすぐにはわからないだろう。
対外的には「瀬戸際外交」を繰り返してきたが、このところ「大山鳴動して鼠一匹」「言うだけ番長」が常だった。だが、正恩氏は国内向けには突然の大粛清を断行し、非情ぶりを見せつけた。
これらの出来事を通じて、北朝鮮は正恩氏による独裁体制の怖さ、底知れぬ不気味さを世界に知らしめた形だ。2014年も何が起こるか分からない。