南スーダンでPKO(国連平和維持活動)に参加している日本の自衛隊が韓国軍に銃弾1万発を無償で提供したが、その経緯について日韓の説明が全く食い違っている。日本側は韓国側の依頼を受けて「人道的、緊急的」観点から提供したのに対して、韓国側は「予備量を確保」する目的で「国連に支援を要請した」と主張しており、話は噛み合わない。「依頼」についても「していない」というのが韓国側の主張だ。
日韓で認識が一致している数少ないポイントは「韓国政府としては日本に謝意を表明していない」という点だけだ。
韓国の現地部隊は「この弾薬は日本隊と韓国隊の強い絆の象徴」と感謝の電話
韓国から要請があった事実は、現地に派遣されている自衛隊の幹部が明らかにしている。
南スーダン派遣施設隊長の井川賢一1等陸佐は2013年12月24日、小野寺五典防衛相に対して
「(韓国の宿営地の)『まわりは敵だらけであり、弾薬が不足している。1万発の小銃弾を是非貸してくれないか』という差し迫った要請があった」
とテレビ会議で報告。井川氏によると、弾薬到着後には、韓国側から、
「日本隊のご協力に感謝します。この弾薬は日本隊と韓国隊の強い絆の象徴だと考えております」
という内容の電話があったという。
だが、同時期にソウルで開かれた韓国政府の会見は、井川氏の説明と食い違う内容だった。外交部の趙泰永(チョ・テヨン)報道官は、
「追加防御の意味で国連に弾薬の支援を要請し、国連を通じて支援を受けたというのがすべて。それ以上でもそれ以下でもない」
と述べ、日本に直接依頼したとの見方を否定した。キム・ミンソク国防部報道官は、
「弾薬が不足したのは判断ミスなのではないか」
と問われ
「(厳しい状況が長引く)可能性に備えて予備量を確保する意味で、臨時に借りた。不足はしていない」
と釈明した。
一連の答弁は、韓国メディアが
「問題は、結果的ではあるが安倍政権が掲げている『積極的平和主義』の正当性を韓国が『広報』する役割を果たしたという点だ」(中央日報)
といった批判を展開していることに配慮しているためだとみられる。