学校に行かず、仕事も持たない「ニート」と呼ばれる若者たち166人が自分たちの手で設立した、「NEET株式会社」が話題だ。
NEET株式会社がうまくいくのかどうか、その将来性は未知数ではあるが、全員が株主でかつ取締役というコンセプトは、「会社は誰のものか」という議論に一石を投じた。
「ただのお遊び」「会社をなめんなよ」と批判も
NEET株式会社は、インターネットを通じて全国から意欲のあるニートを募り、一人6000円を出資して設立した。
平均年齢は27.9歳。雇われたらニートではなくなってしまうので全員が取締役。全員が株主なので、利益を搾取する第三者もいない。会社設立の企画段階から中心的な役割を担っていて、唯一ニートでない慶応大学SFC研究所上席訪問所員の若新雄純氏が代表取締役会長に就いたが、社長は取締役が日替わりで務める。就業規則や出勤時間もない。お互いは本名を知らず、ハンドルネームで呼び合い、すぐに儲かるかわからないことも楽しければ取り組む。あくまで「ニートらしく!」がモットーという。
そんなNEET株式会社に対する声はさまざま。
インターネットでは、
「こんなの、ただのお遊びに過ぎない」
「会社を、カネを稼ぐということがどんなことか。なめんなよ」
「みんなで会社つくって仲良くニートらしくって、気持ちが悪い」
「ニートがただ集まっても無意味」
「この人たちの中で、いい仕事をする人もいるだろうけど、ニートを引きずったままの人も、色々出てくるんだろうね」
と批判的な声が目立つが、その半面、職に就かず、職探しもせず、「怠け者」「無気力」といったレッテルを貼られがちなニートの、少なくとも165人が「やる気」を出したのだから、それを評価して見守ろうと、前向きに受けとめる声もある。
賛否渦巻くといったところだ。
全員が株主、かつ取締役「結果的に形骸化」も?
とはいえ、「会社のあり方」に一石を投じたのは確かなのだろう。そもそも株式会社は、会社の資本と経営を分離し、会社の経済的な責任を株主が負い、株主から委託された経営者が経営責任を負う。そこで働く従業員はいずれの責任も負わない代わりに、経営に関与する権限もない。
資本と経営を分けてしまえば、お金がある人が出資(所有)に、マネジメント能力のある人が経営に専念すればいい。
ところが、日本では「会社は株主のモノではない」という感情的な意見も根強い。会社は株主に経営者、従業員の、「会社に関わるすべての人のもの」という考えが広がり、そのためなのか、最近では経営に必要なリストラが決断できない経営者が現れ、正社員が既得権益になっているといった声が高まるなど、どことなく閉塞感すら漂っている。
NEET株式会社は、資本と経営が分離しておらず、実質的には株式会社ではない。出資範囲に限定されているとはいえ、ほぼすべての責任を166人が「全員」で負う、いわば「会社は従業員のもの」という考え方を具現化した会社といえる。
もっとも、全員が株主で取締役でもある、全員参加のガバナンス体制で、意思決定がうまくいくとも考えにくい。
「弁護士ドットコム」によると、NEET株式会社の「全員が取締役」について、「法的には300人の取締役も可能」という。しかし現実問題として取締役が多すぎると、「機動的な意思決定はできないのではないと思われ、結果的に形骸化する可能性はある」と指摘している。