東京都の猪瀬直樹知事(67)が辞職を表明し、焦点は2014年2月上旬にも行われる都知事選候補者の動向に移った。当選には都議会で大多数を占める自民党と公明党の支持を得ることが不可欠だ。
一部民放や夕刊紙によると、安倍晋三首相が周辺に対して、都知事選候補について「若い女性がいい」との考えを伝えたというのだ。仮に首相の意向が本当だとすれば、急浮上してくるのが「ミセス五輪」こと自民党の橋本聖子参院議員(49)だ。
聖子の「聖」は聖火の「聖」
安倍首相が周囲に伝えたとされる「若い女性がいい」という意向は、テレビ東京を皮切りに、現時点では夕刊フジ、東京スポーツなどが伝えている。
猪瀬氏が12月19日朝に開いた緊急会見では、辞任を決意した理由のひとつとして、五輪とパラリンピックの準備を「滞らせる訳にはいかない」ことを挙げた。そう考えると、次期都知事には五輪の準備を円滑に進める能力を持っていることが求められる。
その意味では、橋本氏と五輪とは切っても切れない関係だと言える。
橋本氏が生まれたのは前回の東京五輪開会式の5日前にあたる1964年10月5日。橋本氏のウェブサイトによると、
「(聖火が開会式の)ランナーの手から聖火台に移された瞬間、抜けるような青空に燃え上がった炎を見て感動した父が名付けてくれたのが『聖子』という名前」
「『オリンピックに出るために生まれた』と聞かされて育った」
とある。その後、冬季はスピードスケート、夏季は自転車競技で計7回五輪に出場。1992年のアルベールビル五輪では日本人女性として冬季五輪では初めてのメダルを獲得した。
1994年には「聖火に恋して」(日刊スポーツ出版社)と題した著書まで出版している。
森喜朗元首相とのパイプが太い点も高評価
1995年には参院議員に初当選し、国会議員としてのキャリアも4期、19年目。すでにベテランの域だ。
日本オリンピック委員会(JOC)の常務理事でもあり、五輪招致議員連盟会長代行として、招致に貢献したひとりでもある。2014年2月にも組織される五輪組織委員会のトップに取りざたされている森喜朗元首相(76)とのパイプが太い点も、政府・与党内での評価が高い。
もちろん、五輪に関する業務は都知事の全体の業務からすれば、ほんの一部。さらに、都知事選とほぼ同時期の14年2月に開幕するソチ五輪では、日本選手団の団長を務めることも決まっている。仮に出馬するとなればJOCが混乱することは確実で、仮に自民党が橋本氏を推したとしても、橋本氏がそれを受けるかは未知数だ。
丸川珠代氏、小池百合子氏、安藤優子氏の名前も浮上
それ以外の女性候補者としては、与党側では丸川珠代参院議員(42)、小池百合子元防衛相(61)、片山さつき参院議員(54)、それ以外ではニュースキャスターの安藤優子氏(55)、蓮舫・元行政刷新担当相(46)などが取りざたされている。
男性では、五輪担当の下村博文文科相(59)、舛添要一元厚労相(66)、議員辞職を表明した東国原英夫氏(56)など名前が浮上している。ただ、舛添氏は10年に自民党から除名処分を受けており、東国原氏は08年に自民党が衆院選への出馬要請をした際に総裁のポストを要求し不興を買ったという経緯がある。舛添、東国原両氏については、仮に出馬したとしても組織のバックアップを得ることは難しそうだ。
なお、都知事候補をめぐる安倍首相の意向については、菅義偉官房長官が13年12月19日午前の会見で、
「党が中心になって、東京都連を中心に候補者選びをすると思う。党本部としても連携していく」
と述べるにとどまっている。