中国中央銀行の「鶴の一声」で価格が半値に
海外では、投機目的にビットコインが利用されているケースが増えてきた。12月13日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、中国人男性の個人投資家を「4か月で3700万円もうけた」と紹介した。中国での取引量は、世界の3割以上に上るという。1月の時点で1ビットコイン=1171円だったのが、11月になると最高値で12万円を超えた。1年足らずで100倍に膨れ上がった計算だ。
潮目が変わったのは、中国中央銀行による通達だった。12月5日に中国国内の金融機関に対し、ビットコインの取引を規制したのだ。これにより中国の通貨・人民元による購入が不可能となった。フランスの中央銀行も、ビットコインの価格が不安定でユーロなどの通貨と交換できなくなる危険性を指摘し、警告。ノルウェーの金融当局も対策に乗り出す方針だと報じられた。
するとビットコインの取引価格は一気に下落。東京の専門取引所「Mt.Gox」では、12月19日17時現在のレートは1ビットコイン=6万3000円と、最高値のおよそ半額にまで急降下している。
取引をしたり自力で「採掘」したりするビットコインは、金に例えられることがある。だが金の場合、たとえ市場価値が下がっても実物は手に残る。仮想通貨の場合は数字と、目に見えない信用がすべてだ。ビットコインに批判的な向きは、日本国内で2009年に起きた巨額詐欺事件で用いられた疑似通貨「円天」と比べる。都内の業者が、会員に10万円を預けさせる代わりに「使っても減らない」と称して「1年ごとに預けた金額と同額の円天」が手に入るとして多額のカネを集めた。これほどうまい話があるはずもなく、ほどなくして破たんした。ビットコインの仕組みは円天と全く異なるが、確固とした裏付けが見えないとして両者を重ね合わせているのかもしれない。
各国金融当局の規制に縛られないはずが、実際は中国中央銀行の「鶴の一声」が相場に大きな影響を与えた。1年足らずで価値が100倍に増えたかと思えば、まるでバブルがはじけたように一気に半値に落ち込んだ。今後、仮に暴落してもコントロールする管理者はいない。危うい「世界通貨」への不安はくすぶる。