衆議院議員で作家の石原慎太郎さん(81)が、集英社の文芸誌「すばる」から小説掲載を拒否されたと別の文芸誌で明かして、波紋を呼んでいる。ネット上では、その理由について様々な憶測が出ている。
「あなたの小説は、一切載せません」。石原慎太郎さんによると、「すばる」の女性編集長は、こう言い切ったという。
「これは勇気ある女だなと思ったね」
事の顛末を明かしたのは、2013年11月21日に扶桑社から発売された文芸誌「en-taxi」でだ。「東京五輪決定に思うこと」のテーマで石原さんがインタビューに応じており、文壇にまで話が広がったときに、掲載拒否のことが出た。
石原さんは、「こないだ面白かった」こととして、久しぶりに「すばる」に小説を載せようと編集部に電話したときのエピソードを持ち出した。
編集長はなかなか電話に出ず、3度目でやっとつながり、前出のように拒否されたという。石原さんが理由を聞くと、編集長はこう答えたというのだ。
「あなたは差別論者です。あなたの『三国人』という言葉は許せない」
石原さんはすかさず、その言葉は国会でも問題になったが、法務大臣が「まったく問題ない」と言ったと編集長に反論した。すると、編集長は、「それは知ってます。それでもあなたの芯は差別論者だ。だから載せません」と言い返したそうだ。
このことについて、石原さんは、インタビューでは不満を漏らさず、「これは勇気ある女だなと思ったね」とむしろ持ち上げている。
ネット上では、一部サイトが取り上げたこともあって話題になり、編集長がなぜ掲載を拒んだのかについて論議になっている。
石原さんが3年前の東京都知事時代、過激な性描写を含む漫画やアニメの規制に乗り出したことから、「出版業界は都条例の恨みは忘れてないぞ」といった指摘が出た。また、石原さんの小説はもう売れなくなってきており、出版社側もあまり相手にしたくなかったのではといった憶測まであった。
石原さんの依頼を断る口実だった?
つまり、石原慎太郎さんの依頼を受け付けない方針が集英社にはあるらしく、「すばる」の女性編集長は、石原さんの依頼を断る口実に差別論者という表現を使ったのではないか、ということだ。実際、石原さんが「三国人」という言葉を使って問題になったのは、2000年とかなり前のことだったこともある。
そこで、編集長の発言は本当にあったのか、あったとすればその真意は何かについて、集英社の広報部に2013年12月18日に取材した。しかし、この日のうちにコメントは返ってこなかった。なお、現在の編集長は男性のため、石原さんは、前の編集長のことを指しているらしい。
石原さんは、インタビューではさらに、講談社の雑誌にも小説などが載らなくなったと漏らしている。それは、50年ほど前からだといい、講談社の文芸誌「群像」の元編集長と当時ケンカになって、元編集長をぶん殴ったからだという。元編集長について、「変な野郎だったな」とつぶやいている。
関係者によると、少なくともここ5年は「群像」に石原さんの小説などは掲載されていないそうだ。講談社の広報室では、「あまりに昔のことですので、答えられる人はいない」といい、雑誌に小説などが載らなくなっているのかについても、「すべては確認できない」としている。
なお、石原さんの小説などは、扶桑社など産経新聞系の出版社や、文芸春秋社などでは現在でも載せられているようだ。