北朝鮮の国営メディアが配信する動画や写真には、「修正・改ざん」疑惑が絶えない。ナンバー2だった張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の突然の失脚もあり、さらにこの傾向が加速しそうだ。海外のアナリストによると、最近、過去に国営メディアに掲載された記事が大量に削除されたというのだ。
今回の記事の削除は一時的なものだったようだが、北朝鮮が歴史を書き換えようとする意思を改めて明確にしたともとれ、波紋を呼びそうだ。
13年9月以前の記事3万5000本が一時期見られなくなる
米国の北朝鮮専門サイト「NKニュース」が2013年12月16日に報じたところによると、北朝鮮のウェブサイトを継続的に分析しているニュージーランド在住のプログラマー、フランク・ファインスタイン氏が異変を発見した。国営朝鮮中央通信のウェブサイトで、ある時点から突然13年10月以降の記事にしかアクセスできなくなったのだという。言い換えれば、13年9月以前の記事は見られなくなったということで、その数は朝鮮語のものだけで3万5000本にのぼると推定されている。この3万5000という数は、記事全体の98~99%に相当するという。英語、スペイン語、中国語、日本語など他言語を含めると、10万本近い記事が削除されたとみられる。
朝鮮労働党の機関紙、労働新聞でも2万本程度が削除されたといい、個別のメディアではなく、さらに上部の組織の判断で記事が削除された可能性もある。
ただ、12月17日17時時点では、朝鮮語版で「金正日」とハングルで検索すると12年4月の記事までさかのぼって読むことができる。大量削除は一時的なものだったとみられるが、その狙いは明らかではない。
「張成沢」と検索すると死刑執行伝える記事しかヒットしない
削除されたままなのが、死刑を執行された張成沢元国防副委員長に関する記事だ。「張成沢」と検索して唯一ヒットするのが、張氏の死刑執行を報じる12月13日の記事だ。これは朝鮮語版でも日本語版でも同じだ。
NKニュースの分析によると、張氏について扱った記事が10~15本削除され、張氏への言及がある記事500本程度から張氏の名前が削除された模様だ。
張氏をめぐっては、失脚後に再放送されたドキュメンタリー番組が不自然に加工され、その姿が削除されたことが明らかになっている。今回の記事削除で、北朝鮮当局がウェブ上でも同様の方針を貫いていることが裏付けられた形だ。
朝鮮中央通信の記事は、北朝鮮にサーバーが置かれているウェブサイト(http://www.kcna.kp/)以外にも、日本にサーバーがあるウェブサイト(http://www.kcna.co.jp/)でも読むことができる。日本のサイトでは、張氏に関する過去の記事がヒットする状態が続いており、北朝鮮本国と運用方針に差がある可能性もある。