専門家「日本はアメリカの反応を見過ぎた」
大阪大学大学院の渡邉浩崇特任講師(宇宙政策史)は、中国は、必ずしも資源・軍事目的だけで月探査を進めているわけではないと言う
「ヘリウム3と言っても、地球上ですぐにエネルギーとして使えるわけではありません。国際法の宇宙条約では、軍事施設は作らないと決めており、中国がすぐにそのようにする可能性はあまりないと思います。中国はむしろ、科学技術を含めて総合的に国力を高めようとしているとみています」
たとえ、月面にミサイル基地を作ったとしても、月面から地球に到達するのに1、2日はかかり、地球上から発射する方がメリットはあるという。また、アメリカなどは高度な軍事技術があるので、月面の方が反撃の心配がないということにもならないとみる。
ただ、中国の月面進出で、日本が遅れを取ったのは事実だという。日本は、2007年に探査機「かぐや」を月で周回させ、13年ごろには後継機を月に着陸させる構想もあったが、それが尻すぼみになった経緯がある。
「米オバマ政権が火星探査に大きく舵を切ったので、その反応を見過ぎたのだと思います。天体の領有は禁止されていますが、月に探査車などを残した国に優先権が出て早い者勝ちみたいになるのは当然出てきます。日本は、優柔不断でアメリカに頼り過ぎたのでは。経済が悪く、財政が厳しくても、着実に計画を続けていくことが大切でしょう。でないと、インドなどにも出遅れてしまいますよ」