「仕手戦にでも巻き込まれているのではないか」――。そんな声まで聞こえてきたミクシィ株の乱高下が治まらない。
2013年12月10日には年初来高値を更新する、値幅制限の上限(ストップ高)の9060円まで上昇。前月11日からの1か月で8倍強にも膨らんだことから、過熱感が高まっていたことは確かだが、いったい何が起きているのか。
資金潤沢、「どこかを買収するのでは」との思惑働く?
東証マザーズに上場する、交流サイト(SNS)大手のミクシィ株は、いま最も注目されている銘柄だろう。変動幅が大きいとされるIT関連株とはいえ、とにかく最近1か月の値動きは激しい。
12月16日は取引が始まると、前日(13日)に比べて205円安の4855円に値を下げたが、その後は買いに転じ、一時5520円と460円高に達する場面もあった。節目である5000円を付けたことで買いムードが高まったが、再び下落。取引を終えてみれば、前日比680円安の4380円で引けた。
そもそも、ミクシィは2013年4~9月期の中間決算で13億円の最終赤字を計上。それを受けた11月11日の株価は終値で1087円と、年初来安値に近づく落ち込みだった。
ところが、その直後から急上昇に転じる。手がかりになったのが、9月に配信を始めたスマートフォン向けゲーム「モンスターストライク」だ。朝倉祐介社長も、11月8日の決算発表時に「確実にヒットする兆しがある」と、自信を深めていた。
決算発表前には、インターネットに「リストラがあった」との書き込みが見つかり、業績不振を印象づけてしまったが、それも結果的にはプラスに働いたようだ。ある個人投資家は「ミクシィは『リストラではない』と否定したが、多くの投資家はリストラと受け止めた。リストラすれば、収益は改善に向かうだろうと読んだわけです」という。
また、デイトレーダーの金子好之氏は「ミクシィは潤沢なキャッシュを持っています。そこに注目した投資家は少なくないでしょう。一時はどこかを買収するのでは、といった噂もあり、そんな思惑で買いが入り、また軽い値動きからデイトレなどが参入したことで買いが膨らんだ」と、推察している。
専門家の評価は割れる
一方、この1か月かけて上昇してきたミクシィの株価は、わずか4営業日で半減した。きっかけは、2013年12月11日にゴールドマン・サックス(GS)証券が、投資判断を3段階で真ん中の「中立」から最下位の「売り」へ引き下げたことが材料視された。前週末(13日)までの3日連続で、取引時間中の制限値幅の下限、ストップ安まで下落していた。
目標株価は1200円に設定している。
これに対して、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は同日付でミクシィの投資判断を3段階中最下位の「アンダーパフォーム」から2位の「ニュートラル」に変更した。2016年3月期まで営業赤字が続くとみていたが、新たに15年3月期を37億円、16年3月期を63億円の営業黒字と予測。目標株価(12か月)は従来の930円から、約9.6倍となる8900円まで大きく引き上げた。
評価の分かれ目は、ゲーム「モンスターストライク」にある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの大ヒットゲーム「パズル&ドラゴン」級と高く評価したが、GS証券は「ゲームへの過剰な期待の沈静化とともに株価も下落する」としている。