生活保護受給者の親族が仕送りすべき援助額の「めやす」を大阪市が作り、その概要を報道発表した。親族の年収によってめやすを決めており、ネット上では、その内容について賛否両論になっている。
改正生活保護法が今国会で成立して、2014年7月の法施行から、行政が調査権限を持って、年収や資産などの報告を受給者の親族に求めることができる。
「色々な事情がある親族がいる場合も無視?」
大阪市のめやすは、そのときに親族に求める仕送りの基準となるものだ。
市の保護課が作った報道資料によると、市職員の平均でもある年収630万円の場合は、受給者の親に最大で月に3万4000円程度までの仕送りを求める。これは年間にすると、約41万円の負担だ。また、年収1000万円の場合は、最大で月に4万9000円程度までの仕送りを求めることになる。
資料では、母子家庭の子供の父親が仕送りすべき援助額も出している。これは生活保護を受ける場合は、親権がなくても養育費も出すべきということだ。
子供が義務教育を受ける10歳なら、年収630万円で月に6~8万円、年収1000万円で月に10~12万円の仕送りが適当だとしている。
市職員については、受給者の親族になっているときは、報道発表された13年12月12日の時点から仕送りを求めていくとした。市の調査では、10月末現在で対象者が156人いたが、仕送りしていたのは13人だけだった。橋下徹市長はこの日の会見で、「節約してサポートしてもらう」と職員の自覚を促した。
こうした内容が報じられると、ネット上では、賛否が分かれる議論になった。仕送りの基準額を示したことについて、「合意するよう促すまでなら問題ない」「大阪市職員から手本を見せないとね」と好意的な声も出た。一方で、「色々な事情がある親族がいる場合も無視?」「成人後も個人の自立はありえないようだな」などと心配する声も上がっている。
「親族の続き柄や関係性などくんで額決める」
報道発表時には、大阪市がさらに詳しく9段階ある年収ごとなどに説明したらしく、メディアごとに断片的な情報が流れている。
報道によっては、受給者の兄弟でも、年収630万円で最大41万円の仕送りが求められるとされた。また、年収300万円なら親兄弟に最大で月に2万2000円も仕送りすべきと紹介したケースもあった。
大阪市の保護課に取材すると、年収ごとなどの表があることを認めながらも、「数字の一人歩きが怖い」として、ホームページ上などで表を公開していないことを明らかにした。
親と兄弟とで求める仕送り額を同じにするのか、親族間の関係がよくない場合はどうなのかについては、市の保護課では、こう説明する。
「確かに、親と兄弟では違う部分があります。また、親族間で何十年も連絡がないときは、関係を壊すことにもなりかねません。ですから、親族の続き柄や、関係性、経済・家庭事情をくんで、求める仕送り額を決めていきます。表は1つのツールとして使うだけで、仕送りを強制するものでもありません」
親族が関係を偽るなどして協力を得られない可能性もあるが、「丁寧に話を聞いてお願いしていきたい」と言っている。
厚労省の保護課では、大阪市のめやすについて、こう話す。
「年収だけでなく関係性なども考慮すると聞いており、特段間違いではないと思います。ただ、強制と受け取られる恐れもあり、画一的な対応がなされるなら望ましくないでしょうね」
自らがめやすを示すことについては、「仕送りを求めるかは総合的な判断になりますので、その基準額を今後示すことは考えていません」と否定している。