日本には「6万点」の文化財がある
韓国ではここ最近、国外に流出した文化財の「返還」を目指す動きが盛んだ。特に有名なのが、市民団体「文化財を元の場所に」を率いる僧侶の彗門(ヘムン)氏で、日本のみならず各国を行脚しては「略奪された」文化財を見つけ出してきた。
最近では朝鮮王朝時代の印判を所蔵する米ロサンゼルスの博物館に対し、韓国のネット世論にも呼びかけながら、ついに2013年中の返還を約束させた。日本による「朝鮮王室儀軌」の「返還」(2011年)に関しても、民間の立場から熱心に活動している。その対象は幅広く、中には日本統治時代に標本化、保存されていた「妓生の女性器」まで挙げたことがある。
もちろん今回の問題でも先頭に立って行動しており、10月には来日して東京国立博物館を訪れ、鎧・兜に合掌した。ネットを通じて募金活動も展開、国会に決議案を提出した「同志」安敏錫議員を強力にバックアップしている。韓国では現在も与野党が激しい攻防を続けているが、今回の決議はあっさり全会一致で通過した。決議では日本政府に対し、「誠実な調査」を行い、不法に持ち出されたものだと確認されれば、ただちに返還するよう要求している。
しかし所蔵する東京国立博物館は、こうした動きに困惑しきりだ。
「韓国側からの連絡は今のところありません。この問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みというのが政府見解ですので、それに基づけば、こちらから対応する必要はないのでは、と考えています。そもそも、合法的かつ正当に購入したものですから……」
韓国の文化財庁は、日本国内には実に6万点超の「流出文化財」が眠っているとしている。もちろんそのすべてが「略奪」ということはあるはずもないが、彗門氏を始め韓国側ではこれらについても、引き続き返還を求めていく構えだ。