「自民党への擦り寄りが原因」は表面的な見方
この一連のやりとりについて、みんなの党が選挙公約に入れている以上、修正協議を申し入れないと公約違反になるというくらいしか、筆者は考えていなかった。
ただ、これがきっかけといわれると、ちょっと思い当たる節もある。これまでのみんなの党の政策では、経済成長、規制緩和、脱官僚、地域主権、行政改革などでは、渡辺氏と江田氏の間で意見のすりあわせがあり、玄人受けする政策が出されてきた。ところが、外交・防衛があまり書かれていない。特に集団的自衛権への態度は明らかになっていない。
集団的自衛権の行使について、渡辺氏は積極的、江田氏は消極的だ。集団的自衛権は、日本版NSC(国家安全保障会議)設置法と特定秘密保護法と互いに密接に関係している。
今回の内紛について、みんなの党が自民党に擦り寄ったことが原因とする報道があるが、これも表面的な見方だ。みんなの党の衆議院での行動を見ると、日本版NSC設置法と特定秘密保護法には賛成しているが、他の主要法案では反対で、しかも内閣不信任案には賛成している。
政治に関する報道ぶりには、よく注意しなければいけない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。