交流サイト「フェイスブック」の「いいね」ボタンは手軽で便利な機能だ。友人が書き込んだ内容にいちいちコメントを入力しなくても、クリックひとつで「素敵」「好き」といった感想を示せる。
一方で、悲しい話題や失敗談に対して「いいね」は押せないという議論は以前から出ていた。その解決策として、フェイスブック側が「sympathize」ボタンを新設する可能性が報じられた。
情報の出所は、フェイスブックの技術者
情報の出所は、フェイスブックの技術者だ。複数の欧米メディアによると、2013年12月5日に開かれた社内イベントで発言した際、技術者が集まって新機能につながるアイデアを出し合う会議の席上で「sympathize」ボタンの開発が話し合われたと明かしたのだ。日本語では「同情、共感する」という意味だが、「いいね」のような語呂にするならさしずめ「わかる」「だよね」といったところか。
現状では、投稿によっては「いいね」と言えない場合がある。例えば「ペットが死んでしまった」「交際相手と別れた」「仕事でミスした」といった内容だ。悲しさを紛らそう、嫌な思いを吐きだそうとこうしたネガティブな話題を書き込んだ人に、慰めのつもりで「いいね」をクリックしたら「いいわけないだろう」と相手に誤解されるかもしれない。「わかる」ボタンができれば、うっかり不謹慎な反応を返さずにすみそうだ。
英BBCニュース電子版2013年12月9日付の記事によると、仕組みはこうなる。フェイスブックに近況を書き込む際、「今の気分」を示す絵文字を選んで付けられる。「超いい気分」「へこんでいる」「イライラ」といった顔の表情が数多く用意されているが、この中から「一定の感情」、すなわち悲しさや落ち込んだ顔の絵文字を選択した際に、「いいね」ボタンの表示が「わかる」に変更されるというのだ。おそらく自動的に切り替わるシステムが導入されるのだろう。
ただし、正式に実装されると決まったわけではない。フェイスブックの技術者はその後「設置されるかは未定」と発言をトーンダウンさせている。とは言え、社内での議論がある程度進んでいるのは確かなようだ。
「『やだね』ボタンをゲットしよう」はスパムだった
これまでも、「いいね」に続く「第2のボタン」を求める利用者からの声はあった。根強いのが「dislike」、つまり「やだね」ボタンだ。今回「わかる」ボタンについて報じた米ハフィントン・ポストの記事にも、読者から「先に『やだね』ボタンを導入してくれ」との意見がみられた。フェイスブックには友人の投稿だけでなく、オンラインニュースの記事や著名人のページなどがある。多様なページを見ながら自分が支持しない書き込みには明確に「嫌い」と意思表示するために、「やだね」ボタンが必要なのだそうだ。
3年前にはこの機能を巡って、スパム騒動が起きている。コンピューターウイルス対策を手掛ける英ソフォス社は2010年8月16日、フェイスブック上に「公式『やだね』ボタンをゲットしよう」という書き込みとともに不正なウェブサイトへのリンクが記載された書き込みが見つかったと警告した。ネット調査と偽って投稿されたもので、文面は数パターン存在した。リンク先ではアンケートの記入を求められ、個人情報を抜き取られる恐れがある半面、肝心の「やだね」ボタンは手に入らない。
正式には今日まで公開されておらず、今後もあまり期待できなさそうだ。2013年4月3日付の米ハフィントン・ポスト記事では、フェイスブックの人気機能開発に携わった製品技術者がインターネット掲示板上で各種質問に答えた際の、このような発言を引用している。
「フェイスブックでは、(利用者間の)ポジティブな交流に焦点を当てている。『いいね』は前向きな感情を気軽に示すものだ。逆にネガティブな感情を表す機能追加が価値あるものになるとは思えない」
事実なら、相手への共感を示す「わかる」ボタンの方が「やだね」ボタンよりも実現性がありそうだが、現時点ではフェイスブックは何も発表していない。