夏井川渓谷(いわき市小川町)の小集落で除染作業が始まった。仮置場が決まったことが大きい。汚染物を入れた黒いフレコンバッグが仮置場に運び込まれるようになって、わかった(=写真)。
集落のひとつ、牛小川のわが隠居(無量庵)も、明11月29日、「全体除染」の作業が始まる。おととい(26日)、市から事業を受託した共同企業体の現場監督と、わが家で最終的な打ち合わせをした。庭は芝もすべてはぎとってくれて結構、水道管には注意を――こちらからはその2点だけを伝えた。
牛小川には家が10軒ほどある。全体除染は無量庵だけだという。敷地の放射線量を調べたところ、地上1メートルで1時間当たり平均0.24マイクロシーベルトあった。年間1ミリシーベルトの目安は、計算式に従えば毎時0.23マイクロシーベルト。それを0.01だけ超えた。
ほかの家は、たとえば1平方メートルだけの部分除染で終わり、というところがある。逆に、要望を受けて庭を再測定した結果、除染範囲が広がった家もある。コンクリートの庭と、土の多い庭の違いだろう。わが隠居はほとんど土のうえに、庭が天然芝かコケで覆われている。そのへんが影響しているようだ。
除染に税金を投入することに批判的な人がいる、意味があるのか、無駄ではないのか、と。もっともなことだ。が、これは人災で、緊急を要する作業のために行政が東電に代わってやっているのだ(いわゆる代執行)と、私は認識している。
「山のおうち」に孫が遊びに来ない。家庭菜園の楽しみが消えた。キノコと山菜採りができない。春のアカヤシオの花、夏の万緑、秋の紅葉、冬の雪――四季を通じて得られる眼福、自然享受の権利が奪われた。
少しでも事故前の状態に戻してもらいたい。そのための除染である。 問題にしなければならないのは、税金ではなく、事故の責任と、いったん事故が起これば人間の手に負えない巨大システムの是非ではないだろうか。未来に続く"見えない空襲"におびえて暮らさざるをえない人間はそう考える。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
■ブログ http://iwakiland.blogspot.com/