新宿や渋谷から幕張に向かう際に不便だとの声が絶えないのが、新木場駅で東京臨海高速鉄道(りんかい線)からJR京葉線に乗り換えなければならないことだ。両路線の線路は物理的にはつながっているが、運賃精算がネックでなかなか直通運転が実現してこなかった。
だが、千葉市の熊谷俊人市長が2013年12月の市議会で、16年度にも直通電車の試行運行を目指し、JRに働きかける方針を明らかにした。仮に実現すれば、幕張に行く人にとっては利便性が向上しそうだ。どのようにして実現しようとしているのか。
東京駅経由だと乗り換えに8分もかかる
現在、渋谷・新宿エリアから幕張に向かうには大きく2つのルートがある。ひとつは中央線に乗って東京駅で京葉線に乗り換える方法だ。だが、東京駅の中央線ホームと京葉線ホームは非常に遠く、乗り換えには8分程度もかかって非常に不便だ。
もうひとつが、りんかい線経由だ。新宿からりんかい線に直通する列車に乗り、新木場で京葉線に乗り換えて幕張に向かうルートだ。
実は新木場-葛西臨海公園の間には、りんかい線と京葉線を結ぶ連絡線が設けられており、両路線の電車は相互に直通運転することができるようになっている。だが、この連絡線はほとんど使われておらず、利用者は乗り換えを余儀なくされているのが実情だ。
その主な理由が、料金の精算問題だ。りんかい線はトンネル建設に多額の費用がかかったこともあって、運賃が割高になっている。前出の2ルートを例に引くと、新宿から海浜幕張に行く場合、東京駅乗り換えの中央線経由だと片道620円なのに対して、りんかい線経由は920円もする。
この状態で幕張まで直通運転をしてしまうと、運賃は中央線経由で計算されることになる。りんかい線からすれば、新木場駅で一度乗客を降ろして改札を通らせなければ割高分を「取りっぱぐれる」という訳だ。
逆に言えば、この点さえクリアすれば、直通運転に向けた障害は少ないと言ってもいい。
例えば12年3月には幕張メッセで行われた「第37回国際食品・飲料展」(FOODEX JAPAN2012)では、主催者が新宿と海浜幕張を結ぶ臨時電車を走らせた。乗客は招待者などの関係者に限られた。
それ以外にも、東海道本線や中央線から、東京ディズニーリゾートの最寄り駅にあたる舞浜まで団体電車が運行されたこともある。このように、りんかい線の運賃を確実に徴収できる形態であれば、直通運転が可能なことが分かる。
ライナー券でりんかい線の割高分を回収する案も
そんな中、熊谷市長は13年12月6日の市議会で、16年度をメドに直通列車の試行運行を目指す意向を明らかにした。具体的には、今後りんかい線やJRと協議し、実証実験に近い形で「ホームライナー」を運行する。ホームライナーは、特急車両などを利用して都心から郊外に向けて帰宅する客を乗せる電車だ。通常の運賃以外に、500円程度の「ライナー券」を買う必要がある。このライナー券に、りんかい線の割高分を上乗せして懸案を解決するアイディアもあるようだ。
このホームライナーで人の流れがどのように変化するか分析しながら、本格的な展開も検討する。
熊谷市長が13年5月に再選された時の公約(ローカルマニフェスト)には、
「総武線、京葉線、京成千葉線等の幹線交通軸を強化し、広域的な利便性を向上(JR京葉線と東京臨海高速鉄道りんかい線との直通運転の模索など)」
とあり、直通運転は市長のきもいりだとも言える。
また、JRは01年に大宮-新宿-大船などを直通する湘南新宿ラインの運行を開始し、東京と埼玉、神奈川とのアクセスが向上したという経緯がある。にもかかわらず東京と千葉のアクセスは改善されないままで、千葉市では危機感を強めている。このことも、今回の動きを後押しすることになりそうだ。