「スマホのことはまったくわからんが、『SIMフリー』というのが安いらしいから、それちょうだい」――そんな冗談のようなやりとりが、今あちこちで交わされているそうだ。
「SIMフリー」端末といえば、かつてはよほどの「玄人」でないと手を出せなかった。ところがアップルやグーグルの国内取り扱い開始、また対応する「格安SIMカード」増加もあって、今やスマホやPCにはまったく興味のない「ITオンチ」からも大人気だ。
とはいえ、現場では「使い方がわからん!」「そもそもSIMカードって?」といった質問が飛び、店員たちをいささか困惑させているとか……。
「普通の人」もSIMフリーに興味津々
「SIMカードってのには、普通のと小さいのと……あと、もっと小さいの?があるんだよね、『スマホ』だとどれ買えばいいの?」
「そうですね、一般的なスマートフォンですとmicro SIMかと存じますが……」
「『LTE』でもそうなの?」
「ええっとですねえ……」
東京・秋葉原の大型家電量販店――若い娘を連れた中年男性が、「格安SIMカード」売り場の前で、店員を捕まえあれこれ尋ねていた。話しぶりからすると、男性はあまりスマホには強くなさそうだ。一方の店員は、ちょっと困った様子でこれに応じている。
日本では一般的に、契約したキャリアのSIMカードしか受け付けないよう、端末には「SIMロック」がかけられている。一方、こうしたロックがかけられていないのが「SIMフリー」端末だ。こうした端末ならば自由にSIMカードを差し替え、大手3キャリア以外が提供する通信サービスを利用する、あるいは海外に出た際、現地の業者が販売しているプリペイド型のSIMカードを滞在中使う、といった柔軟な運用が可能になる。
日本国内では以前、SIMフリー端末は海外からの輸入や改造などでしか入手できなかったこともあり、一部の「マニア」ぐらいしか使う人がなかった。ところが最近では、グーグルが2013年10月31日に「NEXUS 5」を、アップルが11月22日に「iPhone 5s・5c」をと、相次いで最新端末のSIMフリー版を日本国内で正規発売するなど、SIMフリー端末が容易に購入できるようになった。
また同時にMVNOと呼ばれる、他社(主にドコモ)の回線網を利用し、独自のサービスを提供する業者も乱立している。これらのMVNOによる「格安SIMカード」をSIMフリー端末に差せば、最も安い場合、月1000円前後という低価格で利用可能だ。「通話はできない(できるものもある)」「通信速度が遅い」「通信容量に制限がある」などの難はあり、また端末も基本的に一括購入となるため初期費用は大きいが、大手キャリアの月6000円前後はかかる料金、また「2年縛り」などの束縛と比較すると、確かに「魅力的」ではある。
携帯電話に詳しいITジャーナリストの三上洋さんは、SIMフリー+MVNOの使い道についてこう解説する。
「速度や容量の制限上、動画やゲームなどは厳しいですが、メールやツイッターなど文字主体の利用ならば問題ありません。ガラケーなど通話に使うメインの端末をほかに持っておいて、ネット専用の『サブ回線』として利用するというならば、これほどいいサービスはないでしょう」