特定秘密保護法をめぐり、マスコミの論調と「ネット世論」の大きなギャップが改めて浮き彫りになった。マスコミ各社が総じて「反対」の立場を取ったのに対し、各種ネット調査では「賛成」が優勢を占める結果が相次いだのだ。
「知る権利、民主主義の危機」を訴えた既存マスコミとの差異は何だったのか。
反対側が「多数派」だというが…
「国会が数の論理で動くなら、僕らはどっちが『多数』なのか見せてやらなきゃいけない」
法案成立から明けて2013年12月7日の東京・代々木公園、キャップ姿の三宅洋平さんが吼える。三宅さんは前回の参院選で「ネット選挙」を大々的に展開、17万票超を獲得した人物だ。その呼びかけで開催されたこの日の「大デモ」には、三宅さんのほか山本太郎参院議員、元外交官の孫崎享氏なども駆けつけ、口々に法案成立への抗議の声を上げた。
法案を批判的に取り上げるマスコミは、こうしたデモの光景を繰り返し取り上げ、「国民の不安」論を強調する。2013年12月6日の「朝ズバッ!」で、水道橋博士さんが「(法案成立は)急すぎるってのが『サイレントマジョリティー』だと思いますよ」と、国民の声を「代弁」したのはその典型的な場面だ。
確かに、マスコミ各社が発表してきた世論調査では、「反対・慎重派」が国民の多数派(マジョリティー)を占める。朝日新聞が11月30日~12月1日にかけ行った調査によれば、法案「賛成」はわずかに25%で「反対」50%を大きく下回る。「今国会で成立」を支持した人は22%に留まり、過半数は「継続審議」を唱えた。
法案に対し賛成寄りの立場を取ってきた産経新聞の調査(FNNとの合同)でさえ、「慎重に審議すべき」が82.5%に上る。「どんな世論調査を見ても、この法案に反対する声は5割にも広がり、賛成の声は2~3割にすぎません」(共産党の志位和夫委員長)というのは、ネット以外の「マスコミ」を見る限りでは事実だ。
朝日ウェブアンケートでも賛成が倍
ところが、インターネット上で行われた調査では、「真逆」の結果も少なくない。
たとえばJ-CASTニュースが2~5日にかけ行ったウェブアンケートでは、6269票のうち実に55%が、「今国会で成立」を支持していた。一方の「廃案」は29%、「慎重審議」はわずか13%に過ぎない。
ニコニコ動画などでドワンゴ、ニワンゴが行った調査でも、「今国会成立」支持が36.6%で「多数派」を占める。2ちゃんねるなどでも法案成立直後から、
「日本の夜明けキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
などと歓迎の声が相次ぐ。国民全体から見て多数派かどうかはわからないが、一定の「賛成」の声があることは間違いない。もっとも、こうした「歓迎論」をマスコミはほとんど黙殺している。
彼らはなぜ「賛成」なのか。もちろん、尖閣諸島を巡る中国との対立が激化し、安全保障上の必要性を説く人も少なくないが、一方で「反対」を説くマスコミ、文化人への根強い反発も見え隠れする。
顕著な例は、朝日新聞がウェブ上で行ったアンケートだ。当初は「反対」が優勢だったものの、その存在が話題になると、ツイッターなどで「賛成票を入れよう」という呼びかけが始まった。もちろん朝日への反感からだ。結局アンケートは「賛成」が「反対」に倍以上の大差をつける結果に終わった。
ネット上ではかねてから、「知る権利」をしきりに強調するマスコミに対して不信感が根強い。そうしたマスコミがまさに「知る権利」を盾に法案に反対したところで、冷ややかな空気は強まるばかりだ。こうした問題意識は当の反対派からも出ており、たとえば精神科医の香山リカさんは、5日にツイッターでこうつぶやく。
「秘密保護法に反対してる人がみなキライだからきっと良い法律なんだろ、という意見をネットでよく見る。反対を語れば語るほど逆効果になるくらい嫌われてるちゅうことを、私を含めたいわゆるリベラル派は考えてみなきゃ。これじゃ反対会見開いてかえって法案成立に貢献しただけ、ってことになる」