東電、依願退職1400人 止まらない「優秀な人材」流出

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   東京電力で、福島第一原子力発電所の事故後の依願退職者に歯止めがかからない。

   当初、東電は2013年度末に11年に比べて約3600人減の3万6000人体制とする削減目標を掲げていた。すでにその目標は達成したが、依願退職者の40%超が本店の経営企画部門や原発技術者などの中核社員で、今後の事業運営に支障をきたす恐れが出てきた。

給与カット、将来の見通し立たず…

東電、「3万6000人体制」はすでに達成。それでも、辞める社員は後を絶たない?
東電、「3万6000人体制」はすでに達成。それでも、辞める社員は後を絶たない?

   東京電力によると、福島第1原発事故後(2011年4月以降)の依願退職者は、2013年10月末までの累計で1422人に達した。13年度末には1700人に達するとの見方もある。

   このうち、本店の経営企画部門や原子力発電の重要課題を担当する、中核社員が依願退職する割合は11年度が34%、12年度には42%を占めた。

   東日本大震災前の10年度が依願退職者の24%だったことから、以前に比べて中核社員が離職する割合が上がっていることがわかる。経営不振の企業にありがちな、「優秀な人材ほど、早く辞めていく」状況は、東電も例外ではないということらしい。

   そうした中で、福島第一原発の事故後、現場は事態の収束どころか、除染や汚染水、中間貯蔵施設などの問題を抱えて息つく暇もない。11月23日からは4号機原子炉建屋にあるプールから、初めて使用済み核燃料を取り出す作業が始まった。

   放射能汚染と背中合わせの状態で、約1500本ある核燃料を建屋から約100メートル離れた保管施設「共用プール」に移すには1年を要するのだから、社員らにかかるプレッシャーは相当だろう。

   依願退職者が減らない背景には、原発事故で前人未到の極めて重要な任務にあたっているにもかかわらず、評価は低く、年収の2~3割カットが続いていることがある。また、経営の先行きが見通せないなかで将来への不安が募っているとみられる。

   文字どおり必死に働いているのに、「東電」の社員というだけで後ろ指を指される状況に居たたまれないこともある。

国費投入、さらなるリストラで「人がいなくなる」

   相次ぐ依願退職者で、東京電力の現場はギリギリの人数になっている。東電によると、2013年度末に3万6000人体制を目指していた人員削減計画は、この12月1日時点で3万5995人になり、すでに目標に到達した。

   それにもかかわらず、毎月のように依願退職者は増えている。これから福島の復興事業に相当な人数を投入するのに、さらなる人員削減で現場の業務運営に支障をきたす懸念は高まっている。

   さらに、政府・与党内では除染や汚染水対策、中間貯蔵施設の建設などへの国費投入を機に、東電に一段のリストラを求めている。東電が年内に見直す総合事業特別計画(再建計画)では、追加の経営合理化策として、創業以来初の希望退職が盛り込まれるとみられ、その規模は1000人にのぼるとされる。

   東電の発電や送配電設備の保守部門では機器の異音を聞き分けられるような、高い技能が求められている。また事務部門でも電気料金の複雑な計算を処理するノウハウが必要とされ、東電はこうした技能やノウハウを遺していかなければ、将来の電力の安定供給に影響が出る懸念があるという。

   人材の流出が続くなか、東電は一方で3年ぶりの新卒採用に踏み切り、14年3月卒業予定の大学、高専、高校卒者331人を内定している。

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