12月には大リーグ球団と契約していたはずだった。しかし、現在のところ田中将大のオフはバラ色どころか、先行き不安な状態だ。クリスマスまでに決着がつくのか……。
「結果的にはメジャー行き」と思われているが、果たして?
田中は絶望したはずである。日本プロ野球機構(NPB)の担当者が11月に渡米。大リーグ機構とポスティング・システム(入札制度)について話し合いを持ったのだが、その結果がこれ。
「前進はなかった。今後は電話で話し合うことになった」――
つまり、大リーグ側に体よく追い返された、ということなのである。いまさら日本の言うことなど聞けない、との態度だったらしい。
ポスティングについて大リーグ側から新提案があったのだが、それに対して日本の選手会が待ったをかけた。のち条件付きで了承。しかし、今度は大リーグ側から「考え直す」と通告してきた。
田中は、大リーグ行きの意思を明快にしたものの、宙ぶらりんになってしまった。選手会がちょっかいを出さなければ、新提案でまとまっていた、というのが関係者の認識だった。
皮肉なのは選手会の会長は楽天の嶋で、田中の投球を受ける捕手。思わぬ形で女房役が足を引っ張ってしまった、ともいえる。
当の田中はアジアシリーズが終わった後は、表彰式の出席三昧、それが一段落すると、テレビ出演などに明け暮れている。大リーグの話は聞きようがない状況だ。
今シーズンはまさに「田中イヤー」。タイトルを山のように獲得、選出されたのだが、その賞金だけでも大変なものになっている。
たとえば、MVPと沢村賞がともに300万円。月間MVPは5か月総なめで計150万円。そのほか100万円賞金がゴロゴロ。スポンサー表彰では400万円というのもあった。総計で2000万円は超えているだろう。
周囲は「結果的には大リーグに行く」とみている。三木谷オーナーも星野監督もそれを容認しているというから、国内に障害はない。大リーグの返事待ちである。
田中にとって今年が大リーグに行く最高のチャンスであることはだれもが認めるところだ。「無敗の投手」だから高額、それも超のつく条件を勝ち取れることは間違いない。
今シーズンの田中の成績は、それこそ100年に一度の出来事である。来年、楽天で投げても今季のようなことはあり得ない。無敗の年俸分を働いてくれるとは思っていないだろう。プロはそう考える。
大リーグの意向は不明だ。日本球界は待っているだけ。田中のストレスは溜まるばかりである。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)