業界大手が恩恵を受ける
全清飲は今回の転嫁カルテルについて「中小企業が消費税相当額を負担させられたり、優越的地位の濫用行為などにより、経営が不当に圧迫されることがないように努めることが第一義の目的」と、中小企業を重視した対応だと説明する。しかし、恩恵をより多く受けそうなのは、コカ・コーラやサントリーなどの業界大手。転嫁カルテルという「お墨付き」を得て、堂々と値上げできる環境が整ったからだ。大手主導で価格が決まるという構図は変わりそうにない。
公取委によると、10月中に届け出たのは、塩元売協同組合▽全国化粧品日用品卸連合会▽全国納豆協同組合連合会▽日本産業・医療ガス協会▽日本食肉加工協会の5件。価格表示方法を申し合わせる「表示カルテル」の届け出は、塩元売協同組合▽全国納豆協同組合連合会▽日本ゴルフ場事業協会▽日本産業・医療ガス協会▽日本食肉加工協会▽日本被服工業組合連合会の6件。
このうち日本産業・医療ガス協会は、申請にあたり、「声明」を発表。「原発事故発生以来、電力料金値上げなどによって、事業継続上未曽有の苦境に立たされており、全会員が一致団結してこの問題に取り組む」と事業環境の苦しさを訴えた。
転嫁カルテルを結べば、直ちに経営が安定するというわけでもなく、実効性を疑問視する声もある。だが、価格交渉力の弱い中小企業が消費増税分を転嫁できなければ、企業存続が危うくなる可能性もある。効果があるか分からないけれども、とりあえずは転嫁カルテルを申請しておこうという業界が増えそうだ。