「とんかつ和幸」など全国に270店舗以上展開するとんかつチェーン大手の和幸商事の一部店舗で、客が食べ残したキャベツやお新香を使いまわしていた、などと報じられるとネットでは、「汚ねぇ!!!!」「ソースとか付いたままなのか?」などと大騒ぎになった。
そうしたなか、和幸商事がホームページに「食材再使用のお詫び」を掲載すると、そんなに悪い事なのか、とか、どこの店でもやっているはず、といった意見も増えていった。実はこの「事件」、読売新聞に誰かがタレ込み発覚したが、読売新聞が取材した結果、記事をボツにする予定だったのだという。それではどうして「事件」の公表を和幸商事がしなければならなかったのだろうか。
「バイキングの残ったやつだろ?問題ないじゃん」
読売新聞は2013年11月29日の紙面とサイトに「『和幸』運営のトンカツ店、キャベツ使い回し」との記事を掲載した。事実上のスクープで、食品偽装が騒ぎになっているだけに、読者の大きな関心をよんだ。和幸商事も同日にホームページに「食材の再使用についてのお詫びとお知らせ」を掲載した。それによると、「恵亭松屋銀座店」(東京都中央区)など4店舗で、客が着席した直後に出すキャベツとお新香に関して、客が食べ残したものを別の皿に盛って再度別の客に提供していたことがわかった。「恵亭松屋銀座店」ではキャベツは05年6月から10年夏頃にかけ年間2回程度、お新香は同店が開店した05年4月から1か月毎日と、09年から10年夏にかけ4回程度あったという。こうなった理由については閉店間際に食材が足りなくなり店員の独自判断で提供してしまった、としている。
ネットでは定食のとんかつの横に添えられたキャベツや、小鉢で付いてくるお新香を連想する人が多くいて、汚い、病気がうつるなどと大騒ぎになったが、和幸商事のお詫びに掲載された写真説明を見て首を傾げる人が増えていった。というのも、キャベツは食べ放題として別の大皿に盛られていて、トングと呼ばれる専用の箸で取り皿に分ける仕様になっている。お新香に関しても似たようなものだったからだ。もしこれが問題ならば、牛丼店のカウンターに置かれた紅ショウガや、サラダバー、バイキング料理なども問題になっていくのではないか、
「バイキングの残ったやつだろ?問題ないじゃん」
などとネットの掲示板に書き込んでいる人もいる。
読売が書かなければ朝日、毎日にタレ込みが行く
和幸商事に話を聞いてみると、実はもともとバイキング的な発想で大皿のキャベツを取り皿に取ってもらい、キャベツが無くなったらそこに足すなどしていたのだという。転機が訪れたのは05年の「恵亭松屋銀座店」オープンからで、銀座という立地や客単価が2000円以上というグループ店の中では高級店で、バイキング的な発想とはいっても大皿を客のテーブルの上に乗せるため高級店に似つかわしくない、と食べ残したものは破棄することに決めた。それが同店オープンの1か月後だったという。
「我々としては05年以降は周知徹底してきたつもりでしたが、食材が不足したときなど、お客様に悪いという気持ちがあったのか、以前にやっていて現在は禁止している使いまわしがあったようです。本当に申し訳ありません」
と担当者は平謝りだった。
現在は使いまわしをすることはない、ということだが、なぜ3年以上前のことが今頃明るみになったのだろうか。同社の担当者によれば、何者かが読売新聞に使いまわしをしているという事実をタレ込んだのだという。当時の内実を知っていて、現在はどうなっているかを知らないため、おそらくは元従業員なのだろうと説明した。読売新聞から取材を受け経緯を語ったところ、08年に大きな騒動になった高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)の牛肉産地偽装や、料理の使い回しなどの悪質さに比べれば質が異なる、ということになり、記事にはならなかった。しかし、
「読売新聞が書かなくても、今度は朝日新聞、毎日新聞とタレ込みに回る可能性があり、それならば一気に膿を出し切ってしまおうと発表することにしました。発表することを読売新聞に伝えたことで今回の記事が出たという事です」
と担当者は話している。