政府が「主食米の輸入枠拡大」へ TPP関税全面撤廃に「対案」で抵抗

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   政府は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の関税交渉の一環として、ミニマムアクセス(高関税の代償措置)のうち、主食用米の輸入枠を拡大する案の検討に入った。

   米国をはじめ、交渉参加国の大半が日本に対し、関税の全面撤廃を求めているが、日本としては米や麦など「重要5項目」の関税撤廃は難しいことから米国などに対案として提示し、理解を求めようという狙いだ。

「ミニマムアクセス」総量かわらず

国内産米は守れるか(写真はイメージ)
国内産米は守れるか(写真はイメージ)

   ミニマムアクセスは、日本が国内産米を守るため、高い関税で米の輸入を制限する代わりに、最低限輸入しなければならない外国産米の割当量のことで、世界貿易機関(WTO)の協定で定められている。

   日本は現在、年間消費量の約1割に当たる77万トンを輸入しており、このうち主食用米は10万トンに上る。TPP交渉で検討しているのは、ミニマムアクセス米の総量そのものは変えずに、主食米用10万トンの輸入枠のみを拡大しようというものだ。

   ミニマムアクセス米は保管のためのばく大な費用がかかるほか、取り扱う業者が限られているという問題もあり、年間200億~300億円の赤字となっている。このため、ミニマムアクセス米の総量を増やすことには国内の抵抗が多い。

   一方、主食米用の輸入価格は加工米などの約3倍に上り、米国の関連業者からはこれまでも輸入拡大を求める声が上がっていた。また、主食用米なら、安価な米を求める日本国内の外食業者が多い。国内の主食用米の需要は年間約800万トンで、10万トンの枠拡大でも影響は少なく、政府は大きな問題は生じないと判断した模様だ。

「関税割り当て」の検討も

   また、政府は主食用米の輸入枠拡大と合わせ、重要5項目の一部の品目について、一定数量まで低税率や無税の輸入を認める「関税割り当て」の検討にも着手した。関税割り当てはこれまでも経済連携協定(EPA)で活用されてきた手法だ。政府は「聖域」と位置づける重要5項目は何とか守る形で、他国の高いレベルの要求に抗しようとしている。

   ただ、こうした案に対し、米国をはじめ交渉各国が納得するか否かは別問題だ。重要5項目は米や麦のほか、牛・豚肉、乳製品、砂糖の計586品目にのぼり、これをすべて維持すると、自由化率は最大93.5%となお低い。米国などは最終的な自由化率を95%超に高めることを目標にしているとみられ、日本による多少の関税割り当てなどで合意が引き出せるかは微妙というしかない。

   交渉参加12カ国は2013年12月初旬にシンガポールで開かれるTPP閣僚会合で「年内妥結」を実現するため、精力的な交渉を続けている。日本にとっては時間制限が迫る中での厳しい交渉となっている。

姉妹サイト