韓国サムスン電子のタブレット型端末「ギャラクシーノート10.1」の広告が、海外で話題になっている。きっかけはツイッターに投稿された、この製品の屋外広告を写した画像だ。
キャッチコピーは英文でこう書かれている。「ペニスは指よりも強し」。過激すぎるこの表現、本当にサムスンが決めたのだろうか。
フォトショップのジョークか、こずるいマーケティングか
問題の画像は2013年11月22日、海外に住むコンピューター機器の専門家がツイッターに投稿した。横長の看板広告には確かに「ペニスは指よりも強し(The penis, mightier than the finger.)」とある。リツイートした人たちからは「ウソでしょ」「こりゃ面白いな」との感想、真偽は不明だが「(パキスタンの)カラチにあったぞ」という「目撃談」、さらには「英文として正確じゃない」との真面目な指摘もあった。
一方で、画像編集加工ソフト「フォトショップ」を使って実際にある画像をもとに勝手に偽造したのではないかという疑いを指摘する人も多い。サムスンが、わざわざ自社を貶める下品な宣伝文句を広める必要がないだろう、というわけだ。
オンラインITニュースサイト「ギズモード」英国版は11月25日、「まず間違いなくフォトショで加工された画像だろう」としつつも、ツイッターユーザーはこの屋外広告がエジプト、パキスタン、フランス、ケニアで掲示されていたと主張していると伝えた。記事の最後は「フォトショによる壮大なジョークか、はたまたサムスンがこずるいマーケティング手法を持ち出してきたのか」と締めくくられている。
近年では「炎上マーケティング」が話題になることがある。製品やサービスを宣伝するために、あえて世間の批判を浴びるような言動、行動に出るのだ。メディアが報じれば、ある意味で宣伝費をかけずにアピールできる。ただ無名の製品ならともかく、ギャラクシーブランドはスマートフォン、タブレット型端末で米アップルの「アイフォーン(iPhone)」「アイパッド(iPad)」と双璧だ。わざわざ悪い印象を世界的にばらまく必然性やメリットはないようにも思える。
サムスン電子ジャパンに取材すると、「ギャラクシーノート10.1」の正式なキャッチコピーは「ペンは指よりも強し(The pen is mightier than the finger.)」と説明した。「ペンは剣よりも強し」をもじったとみられる。画面をペン入力できる特色を、古くからのことわざになぞらえたコピーのようだ。
「サムスンが意図して作成したものではありません」
「iPad」にはない、タッチペンで操作する点をアピールする短文に盲点があったとしたら、英文のつづりかもしれない。「ペンは」を意味する「pen is」という2語をくっつけて「penis」としてしまえば、いきなりキワドイ単語に早変わりしてしまうからだ。
サムスン電子ジャパンは、ツイッターで出回っている画像のような屋外広告について「サムスンが意図して作成したものではありません」と明言した。わざと「ペニスは指よりも強し」とのコピーを付けて炎上マーケティングをねらったとの推測を打ち消した。
サムスンでは基本的に、広告制作は「他の多くの会社同様、広告代理店に委託しています」と説明する。完成品ができるまではクライアントであるサムスンと代理店の間で確認、修正を繰り返すので、仮に「pen is」が「penis」と誤植されていたなら誰かが気づき、放置されるはずはない。ギャラクシーのような目玉商品の英文広告、それも世界各地に設置されるとなれば厳しいチェックがあって当然だ。こうなると、実際の広告を撮った画像を加工したのではないかという見方をするのが自然に思えてくる。
どうやらデマの可能性が強くなってきた今回の「珍広告」騒動。結局のところサムスンにとって、損だったのか、得だったのか。