いわき地域学會の第291回市民講座がきのう(11月16日)、いわき市文化センターで開かれた(=写真)。講師は理学博士の湯澤陽一同学會顧問で、プロジェクターを使って、「東日本大震災に伴う大津波が福島県の海岸植物に与えた影響について」話した。
地域学會には自然部会がある。年に1回、市民講座を兼ねて阿武隈山地研究発表会を開いている。今年は阿武隈の大地の東端に生育する海岸植物に焦点を合わせた。湯澤さんは東日本を襲った津波の高さ、地震による地盤沈下、海岸林・絶滅危惧種への影響などを、わかりやすく解説した。
相馬・松川浦のコハマギクは津波で流失した。いわき・三崎海岸のハマギク、同・小浜海岸の崖に生えていた珍種ヒメオニヤブソテツも同じように消失した。
それだけではない。いわき市の新舞子海岸が唯一の自生地だったマツバラン、津波前に確認される産地は松川浦だけだったハマハナヤスリ、松川浦・四倉町(仁井田)・新舞子浜(藤間)からの記録があったハマカキランも、津波で消失した。新種のハッタチアザミは自生地2カ所のうち、1カ所が津波で消失した。
津波をかぶった海岸のクロマツはやがて茶髪になり、立ち枯れた。そのメカニズムは、という質問に、湯澤さんは塩分の浸透圧の問題をあげた。津波が運んできた塩分を過剰に摂取したために、クロマツが脱水症状をおこしたのだ。
糠漬けと原理は同じだろう。キュウリを糠床に入れると、塩分の浸透圧が作用してキュウリから水分が抜け、代わりに酸味・風味がキュウリにしみ込む。陸前高田市の「奇跡の一本松」も、そうして次第に枯れたのではなかったのか。
タブノキは、そのへんは強いらしい。一部枝が枯れるものもあったが、幹の途中から芽を出すなどして回復している。ツワブキもそうだ。
より詳しく、正確に津波と海岸植物の関係を知ろうと思ったら、いわき地域学會の『高久・豊間地区総合調査報告書』(2013年3月発行)を手に取ってほしい。湯澤さんのチームによる調査研究報告が載っている。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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