2013年11月25日、「LINE」ユーザーが世界で3億人を突破したが、世界最大の交流サイト(SNS)「フェイスブック」には、若者離れという頭の痛い問題が浮上してきた。調査によると世界各地で同様の傾向が見られ、この1年で10代のアクティブな利用者数が5割以上落ち込んだ国もある。
逆に「LINE」のようなメッセンジャーアプリでは若者利用者が急増している。手軽なメッセージ交換、写真や動画の共有サービスが受けているようだ。
10代の「アクティブユーザー」日本は12%減少
「10代のフェイスブック離れ」を裏付けたのは、当のフェイスブック幹部の発言だ。米国時間2013年10月30日の決算発表の席で、デビッド・エバーマン最高財務責任者(CFO)は「(米国では)特に10代の若年層の間で、日常的に利用するユーザー数が減少した」と認めた。これに慌てたのか、シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)が11月22日掲載の米ダウジョーンズのオンラインITメディア「オールシングスD」で、「(エバーマンCFOの発言に対する)反応は大げさ。米国の10代の大部分はフェイスブックの利用者で、ほぼ毎日アクセスしている」と打ち消した。
だが、10代離れが現実に起きているとするデータがある。英調査会社グローバルウェブインデックスは11月8日に公式ブログで、独自の測定結果を発表した。同社は過去4年にわたり、フェイスブックの利用度の追跡調査をしている。今回は「過去1か月にログインしたアカウント」を「アクティブユーザー」と定義し、16~19歳の利用者が米国、それ以外の32か国でどれほどアクセスしたかを四半期ごとに示した。米国の場合、2012年第2四半期の53%から同年第4四半期には79%に上昇したが、2013年第2四半期には61%に急降下した。その他32か国では同時期、62%から75%にいったんアップしたものの、その後51%とマイナス24%となり、落ち込みの度合いは米国の結果より大きい。
エバーマンCFOの発言は米国に限っていたようだが、世界的にも10代のアクティブユーザーが減っている。国別の減少率をみると、2012年第2四半期から13年第3四半期の間で16~19歳の利用率が最も減ったのはオランダで52%に達する。以下マレーシア(45%)、フランス(44%)、トルコ(43%)、メキシコ(34%)と広い範囲にわたっている。日本も12%マイナスとなった。
米国は16%減だったが、それよりはるかに深刻な結果が出た国が少なくない。
10代の利用率90%のLINE、40~60代ではフェイスブック優勢
フェイスブックが10代利用者を減らしたと指摘された時期は、「メッセンジャーアプリ」が存在感を高めた時期と重なる。日本発のLINEが代表格だ。2012年7月には利用者数が世界で5000万だったが、2013年1月には1億、7月には2億人、11月25日には3億人を突破した。1年4か月で6倍に膨れ上がった計算だ。
運営会社が発表しているLINEアプリの年齢別ユーザー属性をみると、12~19歳は13.6%と格別割合が大きいわけではない。しかし、他のSNSとの利用度を比較すると、10代ではLINE優勢がはっきりする。ブランドコンサルティング会社リスキーブランドが2013年7月24日に発表した調査結果のうち、同年5月時点での年齢階層別SNS活用率では、15~24歳ではLINEが最も高く28.6%、フェイスブックは数値が出ていないが、グラフから読み取る限り15%程度にとどまっている。
調査会社ニールセンが5月28日に発表したデータも興味深い。スマートフォンでどのようなアプリ、ウェブサイトを利用しているかを調べたものだが、10代での首位はLINEで、利用率は90%に達する。これはグーグルの検索利用の85%を上回る数字だ。トップファイブにフェイスブックは入っていない。
海外でも似たような現象が起きている。米CNN電子版は11月7日付の記事で、ビデオクリップアプリ「スナップチャット」などを愛用する女子高生を取り上げ、「フェイスブックで何百人もの友人を相手に発信するよりも、仲間内で直接コミュニケーションができるこうしたツールの方が好まれるという」と紹介した。11月12日付の米誌「フォーブズ」電子版は、急速に利用者を増やしているアプリの例としてメッセンジャーアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」や中国発の「WeChat(ウィーチャット)」などを挙げた。
先のリスキーブランドの調査結果で、LINEとフェイスブックの活用率は35~44歳で拮抗するようになり、45~54歳はほぼ同率、55~64歳ではフェイスブックが上回る。国内でフェイスブックを支えているのは中高年というわけだ。一例として2013年4月10日付「日刊SPA!」では、フェイスブックの楽しさを説く複数の40代男性の喜々とした感想が描かれていた。
LINEなど他のサービスに若者が「流出」し続けると、フェイスブックはますます中高年のSNSになるかもしれない。