飛行機に乗るときは「離着陸時はすべての電子機器の電源を切る」 というのが常識だったが、これが近いうちに覆されることになりそうだ。米連邦航空局(FAA)がこのほど、携帯電話などについて規制を緩和する方針を打ち出したからだ。
すでに米国では、国内線でもかなりの飛行機で無線LAN(Wifi)が使える状態で、航空会社によっては今回の規制緩和で「いつでも『つながる』」状態が実現することになりそうだ。
米国内線では6割近くが無線LAN装備
これまでは、高度1万フィート(約3000メートル)より低空での電子機器の利用は禁止されていたが、FAAが2013年10月31日、この規制を緩和することを発表した。FAAの諮問委員会が「大半の旅客機では、電子機器の電波干渉に耐えられる」との答申を出したためだ。航空各社が安全性について検証し、FAAの承認を受ける段取りになっており、すでにアメリカン、ユナイテッド、デルタの3大航空会社は国内線について承認を受けている。
これにともなって、機内ではいつでも電子書籍端末で本を読んだり、ゲームをしたり、タブレット端末で動画を楽しむことができる。
ウォール・ストリート・ジャーナルの調べでは、「コミュータージェット」と呼ばれる小型機をのぞくと、米国の国内線を飛ぶ旅客機の6割近くが1万フィート以上で無線LANを使用できる。無線LANサービスは有料で、例えばアメリカン航空の国内線の場合、1日使い放題で14ドル(約1400円)だ。今回の規制緩和で、インターネットの通信に人工衛星を利用している航空会社では、飛行機に乗ってから降りるまでタブレット端末やスマートフォンを使って通信し続けることが可能になる。だが、衛星を使わずに飛行機と地上の基地局を結んで通信している航空会社では、低空の通信に技術的課題が残る。
機内ではフライトモードに切り替える
それ以外にもいくつかの制約がある。携帯電話やタブレット端末は、機内では一旦機内モード(フライトモード)に切り替えた上で、改めて無線LANが使えるように設定する必要がある。連邦通信委員会(FCC)が、上空から3Gや4Gなどの携帯電話回線経由で通信することを禁じているためだ。音声通話も引き続き禁止されている。
それ以外にも、着陸時に視界が悪いときは、機長の判断で電子機器の利用が禁止されることもある。離陸前の機内ビデオが流れている時には、ビデオに注意を払うことも必要だ。ノートPCなどの重い機器は、離着陸時は座席の下や、座席上の棚に収納する必要がある。
この新ルールが適用されるのは、現時点では米国の国内線のみだ。だが、太田昭宏国交相は11月1日の会見で、
「米国の趣旨を一度研究させていただきたい」
と前向きな姿勢を示しており、そう遠くない時期に日本国内でも適用されるとみられる。
国内航空会社では、すでに日本航空(JAL)が成田-パリ線など国際線7路線で無線LANサービスを提供しており、14年夏には国内線でも開始する。全日空(ANA)でも国際線で同様のサービスを予定しており、通信環境の検証が済み次第、導入時期を発表するとしている。米国の規制緩和が日本にも波及すれば、国内の利用者にとっても便利になりそうだ。