小学校の学習指導要領に「排泄」の文字がない
古くからある「学校で排便できない問題」、改善の糸口はどこにあるのだろうか。子供にトイレや排便の大切さを伝える活動を展開しているNPO法人「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さんに話を聞いた。
まず、こうした調査のデータベースがなく、過去の数字と比較できない点が課題だとした上で、「意外と少ない」と見られている「53%」の数字については、「大きな課題。半数以上という現実を深刻に受け止めないと」と指摘する。
排便は生理現象で、我慢すると食欲がなくなる、集中力がなくなる、体調が悪くなる、生活リズムが乱れる、便秘気味の子供は悪化するなど、良くないことだらけだ。
それなのに「学校でできない」子供が多い根底には、小学校の学習指導要領に「排泄」の文字がないという問題がある。子供が社会生活を踏み出す第一歩の所で、排泄のメカニズムやなぜそれが大切なのか、ルールやマナーなどの教育がされていない。その結果、「排便=嫌な物」という文化だけが形成されているのが現状だという。小学校で培われたそのイメージが成長しても残ってしまうことで、中学、高校に進んでもできない子供が減らないのでは、と見ている。
また、家や外出先のトイレがどんどん綺麗になっていく中で、特に公立の小中学校のトイレは古く、暗い、臭い、汚いというイメージが強い。空間へのマイナスイメージも手伝って、ますます学校のトイレが嫌だという気持ちになってしまうとのことだ。
特に男子は小便器と個室が分かれているため、個室に入ることで排便することがばれてしまうのを嫌う子供も多い。「全部個室にすべき」との声もあるが、それに対しては「排便が嫌な物として、見えないように覆い隠そうという考えになってしまう」と懸念している。
排泄についての教育に力を入れていくこと、落ち着けるようなトイレの空間を作っていくことが、子供にとって重要なことだと語っていた。