韓国のサムスン電子が「極秘プロジェクト」を進めているらしい。販売価格が100ドルを切る、「50ドル」のスマートフォンを開発しているという。
「50ドルスマホ」ともなれば、従来のスマホ価格のおおよそ10分の1以下になる。米アップルを抜いて、スマホ市場で最大手となったサムスンが、これで中国やアフリカなどの新興国に攻勢をかけるのか。
スマホはもはや「汎用品」なのか
米調査会社のIDCによると、2013年7~9月期の全世界のスマートフォン出荷台数は前年同期に比べて38.8%増の2億5840万台で、このうちサムスン電子は40.5%増の8120万台と、31.4%のシェアを占めている。
9月に「iPhone」の新機種「5s」と「5c」を発売したアップルは、25.7%増の3380万台で、シェアは13.1%と2位だった。
世界のスマホ市場で、この2強に迫るのが中国勢。華為技術は7~9月期に韓国のLG電子を抜き、販売台数でサムスン電子、アップルに次ぐ世界3位に浮上。レノボ(聯想集団)、ZTE(中興通訊)、クールパッド(酷派)が後に控えており、これらのシェアを合計すると19%にも達する。価格競争力と、世界最大の内需市場を背景に躍進を続けている。
スマホの技術力はサムスンやアップルなどがトップクラスであることに間違いないが、製造技術そのものはいまやどの企業も持てる汎用性のあるものになっているようだ。品質や機能の差がなくなり、スマホが汎用品となってきたことで「安いスマホ」へのニーズが高まってきた。
一方、スマホ市場は、なお拡大途上にある。7~9月期の出荷台数は過去最高を更新。背景には端末価格の下落に伴い、中国での需要が拡大しているためだ。
そうしたなか、サムスンに、市場拡大の見込める中国やアフリカなどの新興国向けに「廉価版スマホ」、しかも「50ドル」という破格で投入しようという計画があるようだ。
日経ビジネス(2013年11月18日号)によると、「50ドルスマホ」の開発は12年末頃から浮上したプロジェクトで、当初は開発セクションから猛反発があった。それを李健熙会長が中国メーカーのシェア拡大に危機感をもち、反対論を一蹴したとされる。
「ギャラクシーS4」の販売価格は800ドル弱。その16分の1の価格で売り出そうというのだから、開発セクションが反対するのは無理からぬところではある。
サムスンの競争相手は「100ドルスマホ」を売る「地場ブランド」
2013年9月に発売されたアップルの「iPhone 5c」は「廉価版」とのふれ込みだった。たしかに最上位機種の「5s」と比べて100ドルほど安くなり、米国では16GBモデルが2年契約で99ドルだった。しかし、日本では同じモデルが5万円程度で販売。中国でも733ドル(4488人民元)と、「5s(16GB)」(865ドル、5288元)やサムスンの「ギャラクシーS4」(850ドル、5199元)と比べてもそれほど安くない。
「iPhone」を、さすがに50ドルで売るのはかなり難しそうだ。
また、米グーグル傘下の通信機器大手モトローラは11月13日、スマホ「Moto X」の廉価版「Moto G」を発表。価格は179ドル(通信会社との契約除く)と、アップルの「iPhone5c」の約3分の1に抑えたが、「100ドル」は割れなかった。
日経ビジネスによると、新興国では中国の「Xiaomi(小米)」やインドの「Micromax」、アフリカの「TECNO」といった、通話と最低限の機能を備えた「地場ブランド」が台頭し、「100ドルスマホ」で販売を伸ばしているという。
サムスンにとっては、もはや競争相手はこうした「地場ブランド」なのかもしれない。