東京消防庁の20代男性消防士が、フリーターと偽ってテレビ東京の深夜番組に出ていたことが分かった。どんな目的でテレビに出ていたのだろうか。
お笑いコンビ「トータルテンボス」の2人を進行役にしたテレ東「TOKYO マヨカラ!」は、登録メンバーの若者たちが身近な話題や社会問題について体験しながら語り合う番組だ。東京都がスポンサーになっている。
4回出演がバレて、東京消防庁が処分検討
男性消防士は、そのメンバーとして、2013年に4回にわたって番組に出演していた。
初出演した4月26日未明の放送では、オススメの東京スポットが特集され、消防士は、インドア派代表として、東京都江東区の深川江戸資料館などを巡って、その魅力を探った。また、8月9日の放送では、都内の出身地にある名所を回り、ふるさと自慢をした。
重いテーマについての出演もあった。6月28日の放送では、薬物依存症のリハビリ施設を訪れて、入所者にインタビューを行った。さらに、9月6日の放送では、自殺防止のテーマで自らの友人との体験を語り、自殺はだれにでも起きうることと訴えた。
ところが、4回目になる9月13日の放送直前になって、東京消防庁に出演が知られてしまった。この日は、消防庁職員の講師がAEDの使い方などを教える救急救命がテーマで、消防士も心臓マッサージなどを体験してみせた。しかし、消防庁によると、過去の放送で消防士の出演を知った別の職員が上司にそのことを伝え、連絡を受けたテレ東側が消防士の出演シーンを差し替えて対応した。
消防庁では、消防士がフリーターと偽って出演していたことについて、地方公務員法違反(信用失墜行為)の疑いがあるとみて、消防士を処分することを検討している。
このことを共同通信が報じると、ネット上では、「別に誰にも迷惑かけてないのに」「何だか気の毒」などと消防士に同情する声も出た。
「彼もシンガーを志している同志です」
東京消防庁の報道係では、なぜ信用失墜行為の疑いがあるかについて、こう説明する。
「公務員の立場でありながら、職業を偽って伝え、番組側に迷惑をかけたことがあります。また、ウソをついて、都民の信頼を失わせるようなことをしたこともそうです」
男性消防士は出演料を受け取っていなかったが、出演するときは、上司が番組の趣旨を理解して許可を出すことが必要だとしている。
今回のケースは、公表基準に達していないが、マスコミから問い合わせがあったので答えたという。職務外の行為なら、停職以上の処分が決まってから公表することになっているとした。まだ処分が決まらないのは、事実関係を調べるのに時間がかかっているためだという。
ところで、消防士がフリーターと偽ってまでテレビ出演したのはなぜなのか。
番組に出演している別の登録メンバーは、2013年4月28日のブログで、初出演後の消防士と東京・新宿でお茶をしたと明かし、「彼もシンガーを志している同志です」と紹介した。とすると、いつか歌手活動をしたいと考えて、そのステップにしたかったということなのか。
消防士の出演動機について東京消防庁に聞くと、報道係では、「まだ調査中ですので、確認できていません」とのことだった。