日産自動車と三菱自動車が軽自動車をベースにした電気自動車(EV)を共同開発することになった。日産と三菱自は2011年6月、軽自動車を共同開発する合弁会社「NMKV」を設立。今年13年6月には姉妹車「日産デイズ」と「三菱eKワゴン」を発売し、9月の軽乗用車販売ランキングでデイズが5位、eKワゴンが10位に入る健闘ぶりを示している。
日産と三菱自は軽だけでなく、次世代のエコカーとして期待されるEVを共同開発し、仏ルノーとも基幹技術を共有する考えだ。しかし、これは裏を返せば、EV開発で世界的に先行しながら、思うように販売が伸びない日産と三菱自がEVの独自開発を諦め、共闘せざるを得ない現実を映している。
ルノーを巻き込んだ世界戦略
日産と三菱自は11月5日、「EVを含む新たなグローバルエントリーカー(世界戦略車)の共同開発を検討している。ルノー・日産アライアンスと三菱自はEVと最新のプラットフォームに関連した技術と商品を共有していく」と発表。日産のカルロス・ゴーン社長(ルノー・日産アライアンス会長兼CEO)はEVなどの共同開発について「日産と三菱自の生産的な協力関係をさらに活用し、ルノーに新たな機会をもたらすことになる」と述べ、ルノーを巻き込んだ世界戦略であることを強調した。
これには理由がある。日産は2010年12月、世界初の量産型EVとして日本と北米でリーフを発売。当時、EVはエコカーの本命と目され、ハイブッドカー(HV)で先行するトヨタ自動車やホンダを一気に抜き去る戦略だった。ところが、リーフの今年9月末の国内販売累計台数は3万台、世界市場でも8万3000台にとどまる。日産は「販売台数が好調に推移している」と強気だが、2016年までに日産・ルノー連合でEVを150万台販売するとした当初の目標には遠く及ばない。
三菱自も軽ベースのEV「アイ・ミーブ」「ミニキャブ・ミーブ」を販売しているが、国内のEVの新車販売シェアは両社を合わせても全体の1%にも届かない。EVは1回の充電で走行できる航続距離の短さが不評で、ハイブリッドカー(HV)の後塵を拝している。トヨタもホンダも「日産のEVの普及率の低さを見て、EVとは距離を置いている」(業界関係者)とされ、HVを凌駕するエコカーとして、燃料電池車(FCV)を本命と位置づけている。トヨタは2015年までにFCVを市販する計画だ。
ゴーン社長「他メーカーの参入は歓迎」
もちろん、FCVは水素スタンドなどインフラ整備が必要で、EVと同じく、一気に普及が進むとは考えにくい。事実、ここに来て風向きが変わる兆しもある。これまでEVに懐疑的だった欧州メーカーがEVの開発に力を入れ始めたからだ。独フォルクスワーゲンは9月のフランクフルトモーターショーにゴルフのEV版「eゴルフ」を参考出品。「2018年までにEVでトップを目指す」と宣言した。独BMWも量産EV「i3」を発売する予定だ。フランクフルトモーターショーで日産のゴーン社長は「他メーカーの参入は歓迎だ。私たちが数年前に思い描いた方向に世界が向かっている」とコメントした。
世界的にEV販売で先行する日産と三菱自が、EVを共同開発するメリットは大きい。とりわけ、リコール問題以降、国内販売が苦戦する三菱自にとって、日産やルノーと基幹技術を共有し、世界的な販売網を活用できる意義は大きい。三菱自の益子修社長が「ルノー・日産との共同プロジェクトによって、さらなるメリットがもたらされることを願っている」と語っているのは本音だろう。EVかFCVか、ポストHVの本命は見通せないが、メーカー間の覇権争いが激しくなるのは間違いない。