新興国経済の減速が不安材料
もっとも、懸念がないわけではない。一つは新興国経済の減速だ。トヨタは、年間販売目標を日本で従来予想から1万台増の223万台に、北米では同2万台増の263万台にする一方、アジアは同6万台引き下げ、164万台とした。タイでは新車購入の促進税制がなくなり苦戦。インドでも、金利引き上げの影響などで市場全体が芳しくない。日産自動車は大手7社の中で唯一、中間決算が営業減益だったが、これはブラジル、インド、ロシアなど新興国での販売が想定以下だったことが大きい。
もう一つは為替相場の動向だ。アベノミクス相場で、昨年11月中旬以降、急速に円安が進み、今年5月には一時、1ドル=103円台までつけた。ところがそれ以降は概ね1ドル=95円~100円のレンジ内で推移。長期的には円安が進むと予測する市場関係者はなお多いが、想定外の円高が進めば、利益も削られてしまう。
とはいえ、予想以上の好調な実績だったことは事実。トヨタの小平信因副社長は「業績が改善すれば、従業員に還元するのは当然だ」と賃上げに前向きな姿勢を示す。しかし「具体的にどうするかは労働組合の要求を踏まえ、議論を尽くして決める」と述べ、従業員の賃金を一律で引き上げるベアについては明言を避けた。
ここ数年、企業業績が改善すれば、ボーナスなどの一時金増額で対応するというのが大企業の基本姿勢。国内企業で時価総額首位のトヨタがこれを転換し、退職金や一時金にも反映される「ベア」に踏み込むのかが、2014年春闘の行方を大きく左右しそうだ。