経済産業省が、みずほ銀行の暴力団員らへの融資放置問題を引き起こした「提携ローン」を扱う18の信販会社に対する調査に着手した。反社会的勢力を排除する審査体制などについて報告を求める命令を2013年11月8日、割賦販売法に基づいて出したもので、報告期限は12月9日。
提携ローンは信販会社が地銀や生損保、信託銀行などと組んで中古車や高価な家電製品などの販売の際に用いる仕組みだが、「入り口」の信販会社の審査が甘く、反社会的勢力が紛れ込むことが問題になっている。信販会社を監督する経産省がようやく重い腰を上げた格好だ。
電機メーカー系と地方独立系が大半
18社は、みずほ銀のグループ会社で、今回の問題の「準主役」とも言える信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)と、ジャックス、セディナ、アプラスの大手4社のほか、日立キャピタル▽三菱電機クレジット▽プレミアファイナンシャルサービス▽イオンプロダクトファイナンス▽ジャパンデンタル▽三井住友トラスト・パナソニックファイナンス▽シャープファイナンス▽全日信販▽山陰信販▽日本海信販▽えるく▽オーシー▽沖縄日立キャピタル▽OCSの14社。電機メーカー系と地方独立系が大半を占める。
オリコは18社一斉に求められた報告命令で、みずほ銀以外の金融機関と組んだ提携ローンについても報告。これとは別に今春、みずほ銀から顧客の借金の肩代わり(代位弁済)を求められた後の対応などについて、11月22日までの報告を求められた。オリコは今回の問題について10月16日にいったん経産省に経緯や再発防止策を報告したが、代位弁済をした後、オリコとしての回収が進まないなど対応に疑問点が多く、経産省が追加報告を求めた。
業界の共通データベース構築へ
銀行や生損保は金融庁、信販会社は経産省と監督官庁が分かれていることが、今回の問題を複雑にしている一因だ。金融庁にすれば「銀行や生損保をいくら身ぎれいにしても、提携ローンで入り口となる信販会社が暴力団排除に動かなければあまり意味がない」(幹部)という意識があり、みずほ銀に業務改善命令を出した背景に「信販会社の現状を問題提起しよう」という意図があったとの指摘もある。
実際、信販会社などの業界団体「日本クレジット協会」が11月7日に公表した会員アンケートでは、銀行などに比べて緩い審査の状況が明らかになった。例えば、「反社会的勢力の情報を収集、管理をしているか」との質問に27.7%が「現時点ではしていない」と回答。取引先が反社会的勢力であることが判明した場合の対応について社内で「明確に規定されていない」が16.6%あった。この結果を受けてクレジット協会は業界として共通のデータベースを、来春をめどに構築することを決めた。みずほ銀の問題で信販会社がクローズアップされなければ、このようなアンケート調査すら実施されたかどうか怪しいわけで、金融庁の当初の狙いはひとまず実現した、とも言える。
もっとも、金融庁も偉そうなことは言えない。「問題把握は担当役員止まり」とのみずほの言い分をうのみにしただけでなく、取締役会に問題融資が報告されていたことを示す資料が提出されていたのに、これを見過ごしたのだ。どこもかしこも緩さが目立つ今回の問題をどう決着させるのか、みずほ銀に追加検査中の金融庁の次の一手が注目されている。