ホンダが、ようやく「元気」を取り戻した。2013年10月の新車販売ランキングで、新型「フィット」が2年6か月ぶりに首位に返り咲いた。軽自動車の「N BOX」も4位に健闘している。
11月20日から東京ビッグサイトで開催される「第43回東京モーターショー 2013」では、2015年発売予定のスポーツカー「NSX」のコンセプトモデルを国内で初公開。ホンダのブースコンセプトは「枠にはまるな。」と、かつての威勢のよさを感じさせる。
北米・アジアの好調で、4~9月期は増収増益
「フィット」はホンダの世界戦略車だ。伊東孝紳社長が「渾身のハイブリッドシステムを搭載した」と絶対の自信を見せたように、6年ぶりのフルモデルチェンジで、ガソリン1リットルあたり36.4キロメートルのハイブリッド車(HV)としてはトヨタ自動車の「アクア」を上回る、世界最高燃費を実現。さらに、そのアクアよりも5万円以上安い169万円からという低価格を打ち出したことで、消費者の注目を集めた。
フィットの2013年10月の新車販売台数は、前年同月に比べて約2.5倍増え、2万3281台だった。新型フィットは9月6日に発売。最初の1か月間で月間販売計画(1万5000台)の約4倍となる6万2000台を超える受注があり、好調な滑り出しをみせた。9月の販売台数は1万9388台にとどまったが、10月は2万台を超えた。
また、「軽」人気が続くなか、「N BOX」は10月の軽自動車の車名別ランキングで、スズキの「スペーシア」に3234台の差をつけて首位(1万7600台)だった。全体では4位にランクインしている。
N BOXは12年度には「軽NO1」の23万6287台を販売。13年上期(4~9月期)もトップの11万155台となり、「ホンダ急伸の原動力」とされる。
N BOXが点火した「勢い」が、フィットでいよいよ「本物」になったというわけだ。
ホンダが10月30日に発表した2013年4~9月期連結決算によると、売上高は前年同期比21.6%増の5兆7243億円、営業利益は28.7%増の3564億円、純利益は13.5%増の2428億円の増収増益となった。
4~9月期の四輪事業の連結売上台数は、3.7%増えて172万7000台。北米やアジアでの売り上げが大きく貢献した。
自動車セクターに詳しい伊藤忠経済研究所の丸山義正・主任研究員はホンダの好調の要因について、「設計や生産体制、販売体制と幅広い分野の変革によるもの」とみている。「自動車メーカーにとって最も重要な、需要を踏まえた売れるクルマつくりの実現のため、経営資源を軽に集中したことがN-BOXのヒットを生み、また消費者の低燃費需要を捉えて、新型フィットやアコードなどトヨタ車を凌駕する燃費性能をもつHV車を投入したことは高く評価できます」と話している。
F1参戦表明でムードが一変
一方、「東京モーターショー 2013」(11月20日~12月1日)に出展される「軽」のオープンスポーツカーのコンセプトモデル「Honda S660 CONCEPT」は、「ビート」の後継として2014年に発売を予定している。
スポーツカー「NSX」のコンセプトモデル「NSX CONCEPT」は、日本初公開。2013年8月にホンダの米現地法人、アメリカン・ホンダモーターが試作車によるデモンストレーションを、米オハイオ州で開催されたインディカーシリーズ第14戦で、世界で初めて公開して話題を呼んだ。現在、米オハイオ工場で量産開始に向けて開発中で、2015年発売の予定だ。
ここ数年、「ホンダは元気がない」と言われ続けてきた。リーマン・ショックに、東日本大震災やタイの大洪水と災害によるサプライチェーン混乱があったとはいえ、北米市場ではゼネラルモータースやフォード、クライスラーが復調。韓国の現代自動車も売り上げを伸ばしていた。低調だったのはトヨタとホンダだけだった。
その中にあって、復調ムードを一気に高めたのがフォーミュラーワン(F1)レースへの復帰であり、スポーツカー開発だったようだ。
前出の伊藤忠経済研究所の丸山氏は、「F1参戦は、経営やクルマづくりの土台が整い、余裕ができたことのあらわれ」と話す。
ホンダは5月、F1シリーズへの復帰を発表した。2015年からマクラーレンにエンジンを供給。実現すれば1988~91年に黄金時代を築いた「マクラーレン・ホンダ」が復活することになる。
スポーツカーこそ、「ホンダらしさ」なのかもしれない。